【視点】教訓踏まえ平和守る行動を

 終戦記念日の15日、犠牲になった310万人の御霊を慰め、平和への思いを新たにしようと、各地でさまざまな行事が催される。
 熾烈な地上戦があった沖縄では、6月23日の「慰霊の日」を中心に沖縄戦を振り返る諸行事があるが、全国的には終戦記念日が戦没者を鎮魂する日とされる。
 78回目の終戦記念日を迎え、まず決意すべきことは、戦争は二度と起こしてはならないという誓いである。中国の急激な軍拡、北朝鮮のミサイル、ロシアのウクライナ侵略など、日本を取り巻く安全保障環境は戦後最悪と呼ばれるほど厳しい。
 だからこそ第二次大戦を教訓に、どうすれば戦争を防ぎ、アジアの平和を守り抜けるかという知恵が求められる。
 太平洋戦争は、日本の中国大陸進出が明確な戦略を欠いたことで起こった。軍部の独走を政府がコントロールできず、大陸での戦線が拡大する中、米英との戦争も開始し、日本は大陸と太平洋での二正面作戦に突入した。
 緒戦では勝利したものの、戦争の長期化とそれに伴う戦力の逐次投入で、国力が限界を迎えたのである。
 戦争末期には国土の防衛線が崩壊し、沖縄で悲惨な地上戦が展開され、本土の大都市は空襲で焼け野原にされた。政策や戦略の誤りが膨大な犠牲を生むという歴史的教訓だ。
 現在の日本は米国と同盟を結び、沖縄をはじめとする国内各地に米軍基地や自衛隊を配備して抑止力を強化する戦略を採用している。
 海外での領土拡大に主眼を置いていた80年前の安全保障戦略とは異なり、専守防衛の態勢で国民を守ることが国是となった。
 当然、80年前とは国際情勢は激変している。日本周辺にミサイルが着弾したり、国境周辺で領海侵入が頻発している状況で、政府が「反撃能力」の保有を決めたのは画期的な出来事だった。一方で、戦力を持たないことを定めた憲法9条の妥当性が改めて問われている。
 戦後の防衛政策が対米依存の度を深めたため、特に沖縄には広大な米軍基地が残ることになり、県民の基地負担軽減が21世紀に持ち越された課題となった。
 日本が「自国は自国で守る」という原則に立ち返り、自衛隊の拡充強化を図っていくことが、将来的な米軍基地の縮小にもつながる道だろう。
 日本は戦後、経済大国となり、平和と豊かさを享受してきた。しかし中国の軍事的台頭と少子高齢化を背景とした経済的衰退が重なり、現在の平和と豊かさを次世代に継承できるか、危ぶまれる事態に至っている。漫然と平和を願うのでなく、平和のために何ができるか考え、行動しなくてはならない。

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