【視点】「第6波」医療守るのが優先

 県内の新型コロナウイルス新規感染者数が1000人に達する勢いで、爆発的に増加している。八重山でも連日、二桁の新規感染者が確認され「第6波」到来の様相が鮮明になった。医療資源が限られた小さな島々で、医療崩壊を起こさぬよう、この危機をどう乗り越えるのか。過去5回の「波」の経験を踏まえた対処が求められる。
 県疫学・統計解析委員会によると、今月に入ってからは新規感染者の80%以上がオミクロン株と推定されている。沖縄では、流行の主流が既に従来のデルタ株からオミクロン株に置き換わったと見られる。
 感染者には発熱、鼻汁、咽頭痛、頭痛などの症状があり、軽症の割合が高い。感染経路は家族や友人、感染者との会食などが多く、この点は従来と変わらない。ただ県は「感染者数が増えれば一定の割合で中等症や重症も増える」と警戒する。
 「オミクロン株で感染力が強まっても弱毒化しているから大丈夫」と安易に考えず、マスク着用、手洗い、ソーシャルディスタンス(社会的距離)などの対策を今後も励行する必要がある。
 ワクチン接種済みでも感染する事例が相次いでおり、もはやワクチン効果を過信することはできない状況だ。ただ、ワクチンには重症化予防などで一定の効果はあると言われており、県は引き続き未接種者に早めの接種を呼び掛けている。
 5日に開かれた県の専門家会議では、医療従事者の休業が急増ことが問題視された。
 同日朝の時点で医師、看護師、事務職員などの医療従事者30人以上の感染が確認されたという。感染者数が増える一方で医療資源は減少しているという深刻な現状だ。
 同日の八重山地区の対策本部会議でも、県立八重山病院から同様の懸念が示された。医療現場を守ることを最優先に対策を考えなくてはならない。
 八重山で新規感染者数が過去最多だったのは、老人施設でクラスター(感染者集団)があった昨年10月の55人だった。だがデルタ株の3倍とも言われるオミクロン株の感染力を考えると、今後、100人規模の新規感染者が出てもおかしくない。宿泊施設や病床の確保が重要だ。
 沖縄には9日から「まん延防止等重点措置」が適用される見通しで、知事は飲食店に営業時間短縮や酒類の提供停止を要請できる。玉城デニー知事は緊急事態宣言の発令も視野に入れる考えを示している。
 感染状況が落ち着き、県経済が立ち直りの兆しを見せていた矢先だけに、こうした措置が観光業界などに大きな打撃になるのは間違いない。
 ただ、県民はこれまで流行の波を5回も切り抜けている。「まん延防止」や緊急事態宣言を際限なく繰り返すのではなく、感染状況をにらみながら、経済の再始動に向けた手も打たなくてはならない。

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