【視点】抑止力の必要性改めて示した

 戦場の凄惨さが改めて浮き彫りになった。ウクライナ当局は、ロシア軍が撤退したキーウ(キエフ)州で市民400人以上の遺体を確認。市民の殺害、レイプ、拷問、遺体の切断など、ロシア軍による数々の残虐行為を告発した。
 これを単にロシア軍の「残忍さの表れ」と見るのは一面的だ。国や時代を問わず、こうした狂気が日常化する最悪の行為が戦争なのだ。
 いったん戦場となれば、敵であろうが味方であろうが、国際ルールを無視した蛮行が横行するのは避けられない。だからこそ戦争を起こさないことが大切である。
 ウクライナ侵攻前から、欧米諸国は繰り返し、ロシアのプーチン大統領に戦争を思いとどまるよう説得を続けた。だがプーチン氏は「特別軍事作戦」と称して開戦に踏み切った。外交や対話だけでは戦争は防げない。確固とした抑止力を相手に示せなければ、侵略の意図を持った相手を思いとどまらせることはできない。今回の戦争は如実にそのことを示したのではないか。
 日本の政治家では、安倍晋三元首相が抑止力に関し最も明快な見解を示す。3日、山口市内の講演で、ロシアによるウクライナ侵攻や中国の軍事力増強に触れ「大切なことは自助努力だ」と指摘した。
 ドイツが防衛費を国内総生産(GDP)比2%超に増やすと表明したことについて「日本もそれに向けて加速する必要がある」と言明。敵基地攻撃能力の強化も求めた。
 安倍氏はこれまでも、ウクライナがNATО(北大西洋条約機構)に加盟していればロシアの侵攻はなかったとの認識を示し、米国の核兵器を日本が共有する「核共有」の議論も必要だと訴えてきた。
 日本の安全保障が現状、日米同盟を基軸とすることはやむを得ないが、米国頼みをいつまで続けられるのかは疑問だ。基本的に「自国は自らで守る」という意識を持たなければ、真の抑止力は持てない。
 沖縄は軍事的膨張を続ける中国に対する最前線にあり、特に八重山は中国船によって日常的に行政区域の領海を荒らされている。安倍氏の指摘にはリアリティがあり、県民も重く受け止める必要がある。
 中国の王毅外相は3月30日、ロシアのラブロフ外相と会談し、中ロ関係の強化を確認した。日米欧がロシアを厳しく批判する中、中国はロシア寄りの姿勢が際立つ。私たちとは価値観が全く異なる国だと改めて実感させられる。
 ロシアのウクライナ侵攻を将来、自国が台湾や尖閣諸島に侵攻する際の「予行演習」とみなし、陰に陽に協力している可能性も大いにある。
 ウクライナの悲惨な状況を見るにつけ、台湾や沖縄が戦場になるような事態は絶対に避けなければならないという思いは強まる。
 安倍氏が提起したような議論に拒否反応を示す人がいるのも事実だ。だが抑止力強化の議論をいたずらにタブー視しても、国民を守る有効策は生まれない。

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