12日告示、17日投票の竹富町長選で、立候補を表明している町職員の前泊正人氏(44)、町議の那根操氏(70)の政策が5日までに出そろい、町が西表島大原で整備を計画している新庁舎のあり方が最大の争点に浮上した。博物館と世界遺産センターを併設する「複合型庁舎」の早期実現を目指す那根氏に対し、前泊氏は適正規模での整備を主張し、計画の見直しを訴える。町は今年度、西表庁舎の建設に向けた基本計画を策定する方針だが、町長選の結果が作業に大きく影響するのは避けられない情勢だ。
那根氏は3月29日の政策発表で「町民の利便性、福祉向上を目指し、議会と協調して西表大原複合型庁舎整備に取り組む」と表明。前町政のもとで進められた複合型庁舎の建設構想を基本的に引き継ぐ考えを示した。
前泊氏は5日の政策発表で「博物館がメインになっている拠点施設のあり方は、一度しっかり見直す。適正規模の庁舎移転であるべきだ」と述べ、西表庁舎を博物館などとの「複合型庁舎」として整備することを疑問視した。
町政策推進課によると、博物館は「文化振興・観光交流拠点」として整備が決まり、今年度は基本設計を行う。世界遺産センターは世界自然遺産登録地となった西表島を訪れる観光客へ情報を発信し、自然環境の保全活動拠点となる。今年度は基本計画と基本設計を行う。
博物館、世界遺産センター、町民ホールの整備には国の一括交付金や沖縄振興特定事業推進費の活用が決まっており、総事業費約49億7000万円のうち8割が補助される見通しという。
那根氏は一貫して西表庁舎の建設に積極的な姿勢。前泊氏も2015年の住民投票で役場移転を求める民意は示されたとして、大原庁舎の建設は否定していない。だが町職員として自ら博物館構想に関わった経験から「50億円も予算をかける必要があるのか」と指摘する。
町は庁内の竹富町役場新庁舎整備等に関する検討委員会(委員長・大浜知司副町長)で2019年から今年まで18回の会合を重ね、大原庁舎建設に向けた基本計画の取りまとめを進めている。
当初、基本計画は21年度中に策定する予定だったが、建設予定地周辺の環境調査を実施する必要性が生じたことや、博物館、世界遺産センター構想と並行して作業を進める必要があることから、策定を今年度に繰り越した。ただ今後の作業に関しては「新町長の判断を待つことになる」(同課)としている。