【視点】「きれいごと」に終始した建議書

 あまりにも「きれいごと」に終始した内容ではないか。沖縄の日本復帰50年に当たり、玉城デニー知事が7日に公表した「平和で豊かな沖縄の実現に向けた新たな建議書」。その安全保障に関する部分である。
 県が建議書を作成するのは復帰直前の1971年、琉球政府(当時)の屋良朝苗主席が日本政府に提出した「復帰措置に関する建議書」以来だ。
 復帰50年の節目に沖縄の歴史や現在の課題を総まとめし、新たな将来像を展望する建議書を作成する意義は肯定できる。
 ただ、新たな建議書の安全保障に関する部分は玉城県政が基調とする政治的イデオロギーがあまりに色濃く、多くの県民が無条件に共感できる内容とはほど遠い。
 典型的なのは米軍普天間飛行場の辺野古移設について「現在政府が進めている辺野古新基地建設は、県民新たな基地負担を強いるもの」と明確に反対を表明しているくだりだ。
 県民の間で賛否が割れ、政府との大きな対立点となっている辺野古移設問題にあえて触れることは、建議書に本来求められている政治的中立性を損なう。建議書というより党派的な文書というイメージが強まり、少なからぬ県民を困惑させる内容になってしまった。
 建議書には平和を希求する沖縄の心、日米地位協定の抜本的改定、普天間飛行場の速やかな運用停止など、県民の思いを代弁する主張も入っている。本来そうした点に主眼を置くべきで、辺野古に言及する必要性は全くなかったのではないか。
 在沖米軍基地の存在は歴史的、地理的な事情が背景にある。建議書が沖縄の基地問題を一概に「構造的、差別的」と決めつけ、本土を糾弾する表現になっていることも、未来志向的であるべき建議書の価値を減じている。
 沖縄を取り巻く現在の国際環境は厳しい。しかし建議書では「武力による抑止が国・地域間の緊急を過度に高め、不測の事態が起こることのないよう最大限の努力を」と述べ、政府に平和外交と対話を要請した。
 沖縄の軍事的機能強化、核兵器の共有、敵基地攻撃能力の保有などの議論についても「県民の平和を希求する思いとは全く相容れるものではありません」と断じ、全体的に抑止力の意義を否定するような表現になった。
 建議書が訴える平和外交で緊張緩和が図られるなら何の苦労もない。だが石垣市の尖閣諸島周辺では中国政府が派遣した複数の艦船が常駐し、漁業者は海保の警護なくして安全に操業できない状況だ。
 中国空母「遼寧」は現在、沖縄や台湾と目と鼻の先の海域で戦闘機の出撃訓練を繰り返している。周辺国の一方的な領土的野心が沖縄を危機に追いやっているという現実認識が、建議書には欠けている。
 抑止力への過度の依存は戒められるべきだとしても、非現実的な建議書の内容は、一般的な国民の理解を得にくいだろう。
 71年の建議書では自衛隊配備に反対する記述もあったが、今回の建議書では自衛隊には触れなかった。玉城知事は「私は専守防衛の組織としての自衛隊を認めている」と理由を説明した。
 50年前に比べ、自衛隊に対する県民の信頼は飛躍的に高まっている。抑止力を疑問視する立場の県としても、自衛隊に対する否定的な記述は盛り込めなかったというのが実情だろう。

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