北朝鮮が21日、「人工衛星」と主張する事実上の弾道ミサイルを発射した。ミサイルは沖縄本島と宮古島の間を通過したと見られており、北朝鮮によるミサイルの脅威がまた沖縄に迫った。国際社会の懸念を無視してミサイル発射を強行した北朝鮮に対し、沖縄県民として憤りを禁じ得ない。
23日には那覇市で沖縄の防衛強化に反対する「平和大集会」が開かれ、石垣市でも連動したイベントが企画された。
「沖縄を二度と戦場にしない」という集会の趣旨には全く同感だが「平和」を連呼したり、非武装を志向するだけでは平和は来ない。今回の北朝鮮の身勝手な行為は、その典型例である。平和を実現するには、したたかな外交力と、外交力を基礎づける強靭な経済力、軍事力が必要だ。
個人の交際においてすら、純粋な善意などというものは見出し難い。ましてや北朝鮮や中国といった国に善意を期待し「対話」だけで事態を打開しようと考えるのは、残念ながら愚かなことと言わなくてはならない。
北朝鮮は今後もミサイル発射を継続する構えを見せている。石垣市などには落下物を迎撃するため、自衛隊が地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を展開している。北朝鮮の動きを考慮に入れると、自衛隊がPAC3の展開継続や、事実上の常駐化に踏み切る可能性も否定できない。
自衛隊は石垣市で当初、南ぬ浜町にPAC3を展開していたが、クルーズ船が接岸する岸壁に隣接した場所だったことから、市が観光への影響を懸念。労組はPAC3の安全性を問題視した。PAC3は結局、南ぬ島町からの移動を余儀なくされた。
県内や島内にPAC3の配備そのものに反発する声があるのも事実だが、PAC3が攻撃用ではなく防御用の兵器であることを考えても、そうした声が妥当とは言えない。
現在は石垣駐屯地内で展開しているが、周囲に山がある地形は迎撃に不向きという指摘も出ている。住民の安全を考えると、早期に適地を確保し、十分な環境で展開を継続できる態勢を整えてもらいたい。
石垣市の尖閣諸島周辺では、島々の侵奪を狙う中国艦の侵入も常態化している。それに加え、北朝鮮が沖縄方向へのミサイル発射を続けていることは、国境という沖縄の立地そのものが、常に有事の危険と隣り合わせという宿命を強いていることを示している。
県内には、日米が「台湾有事」の危機を煽って沖縄の軍事化を進めているという批判の声がある。だが尖閣諸島周辺で日本漁船を威嚇する中国艦の傍若無人を見れば、中国が「台湾侵攻を本気で考えているのではないか」と疑われるのも、自業自得と言わねばならない。
中国は、ミサイル発射を続ける北朝鮮を擁護する姿勢も鮮明だ。こうした国々に対し、日本が目に見える形で備えを固めようとするのは当然である。
現在、公明党の山口那津男代表が訪中しており、中国政府との対話の糸口を模索している。このような粘り強い外交努力は今後も必要だ。駐日中国大使が県庁に玉城デニー知事を訪問し、中国と沖縄の友好を確認したことも、それ自体は歓迎すべきことである。
だが、誠意は行動で示されなければ無意味だ。中国が沖縄県民の共感を得たいと本気で思うなら、尖閣周辺への侵入を即刻中止し、ミサイル発射を続ける北朝鮮に対し、断固たる制裁を加えるべきだ。