【視点】台湾侵攻は無謀な賭けだ

 東京で岸田文雄首相との首脳会談を終えたバイデン米大統領は共同記者会見で、中国が台湾を攻撃した場合の軍事的関与を明言した。台湾有事になれば沖縄や八重山も危機にさらされる。米国が台湾防衛に積極的な姿勢を示したことを歓迎したい。
 一部ではバイデン氏の発言を「失言」とみなす声もある。米政権幹部は、中国が軍事侵攻した場合の対処を明確にしない「あいまい戦略」は変えていないとの認識を示す。
 記者会見でのやり取りは、正確には「台湾防衛のために軍事的関与するのか」という記者の問いに、バイデン氏が「イエス」と答えたというものだ。バイデン氏の真意はともかく、自民党の佐藤正久外交部会長は24日の党会合で「最高の失言をされた」と評価した。
 ロシアのウクライナ侵攻直前、バイデン氏は軍事的に介入する意思がないことを早々に表明し、そのことがロシアを勢いづかせたという分析がある。米国が事前に断固たる意志を示すことは、中国に無謀な賭けをさせないためにも必要だ。
 日本政府も台湾侵攻を決して容認しないというメッセージを繰り返し発信し続けてほしい。
 中国は尖閣諸島を「台湾に付属する島しょ」と呼び、台湾と一体化した島々とみなしている。台湾侵攻の際は当然、尖閣侵攻も予想されるし、台湾に近い与那国島、石垣島などを攻撃する事態も起こり得る。沖縄県民も中国に対し、明確に懸念の意思を示すべきだ。
 ただ、玉城デニー知事が23日、日米首脳共同声明を受けて発表したコメントでは、両首脳が米軍普天間飛行場の辺野古移設推進を確認したことを批判。「辺野古が唯一の解決策との固定観念にとらわれることなく、普天間飛行場の速やかな運用停止を含む一日も早い危険性の除去、早期閉鎖・返還を実現するため沖縄県との真摯な対話に応じるよう求める」と主張した。
 沖縄の平和は、中国の軍事的膨張を止めることを大前提に成立する。日米首脳会談で表明された台湾海峡の平和と安定、日本の防衛力の抜本的な強化などは、沖縄の安全のためにも重要なことだ。
 そうしたことへの評価を抜きに辺野古反対を叫ぶだけでは、真に県民の懸念を代弁したことにはならない。沖縄として発信すべきメッセージが尽くされていないもどかしさを感じる。
 日米首脳会談では、米国による日本防衛義務を定めた日米安全保守条約が尖閣諸島に適用されることを再確認した。
 尖閣諸島は石垣市である。日米安保の適用は当たり前だが、尖閣防衛が米国頼みに終始していいということにはならない。
 尖閣周辺海域では中国艦船の常駐と侵入が続き、海上保安庁は日夜神経をすり減らしながら国境警備に当たっている。もう10年続いているこの状況を、この先さらに10年続けていくのか。百歩譲って日本がその気だとしても、中国にはそんな甘い考えはないだろう。

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