【視点】中国演習、言語道断の蛮行

 言語道断の蛮行と呼ぶほかない。中国が台湾を包囲する6つの空・海域で4日から4日間、軍事演習を実施し、弾道ミサイル5発が波照間島南西の日本の排他的経済水域(EEZ)に着弾、別の1発は与那国島北北西のEEZ外に落下した。中国軍の一部は8日も演習を続行。中国政府は今後も台湾海峡の中間線を越えた訓練を行う考えを示している。
 波照間、与那国をはじめとする八重山住民からは怒りと不安の声が上がった。特に与那国町は万一の事態に備え、漁業者が操業を自粛する事態に陥った。石垣市議会は8日の臨時会で「中国の一連の行動は断じて容認できない」と抗議決議した。与那国町議会も9日に抗議決議する予定だ。
 この演習はペロシ米下院議長の訪台に反発した中国が報復措置として実施した。しかし中国軍幹部は、演習エリアをあえて沖縄に近づけ、台湾や米国だけでなく日本にも軍事的圧力をかける意図があったことを明らかにしている。
 沖縄県民は、中国の露骨な軍事力によって平和な日常をかき乱された。アジアの平和に責任を持つべき大国のあまりにも身勝手な振る舞いだ。
 中国が台湾を統一することに固執するのは、民主主義の政治制度を持つ台湾の存在が、中国共産党政権の正統性を揺るがしかねないためだ。
 「中台統一」のスローガンの内実は、中国の勢力圏を東アジアで拡大し、その支配下から民主主義を一掃することにある。台湾だけの問題ではなく、国際社会における民主主義の存立そのものが脅かされている。
 ペロシ氏の訪台は、そうした中国の意図を牽制する狙いがあった。危機を増幅させた責任は100%中国側にあり、台湾はもとより、ペロシ氏や米国が非難されるいわれはない。
 この軍事演習が明らかにしたのは、台湾有事はイコール日本有事、沖縄有事であるという現実だ。中国がレッドラインを踏み越えれば、沖縄本島や八重山の島々にミサイルが降り注ぐ事態も想定される。
 日本が戦後70年以上謳歌してきた平和な日常は、中国の侵略的行動によって、音を立てて瓦解し始めた。日本は早急に、自国の安全保障体制を再点検すべきだ。
 中国が沖縄の友人ではあり得ないことも明白になった。
 沖縄はコロナ禍前まで、知事が足繁く中国を訪問するなど、中国からの観光客誘致に汲々(きゅうきゅう)としてきた。そのためか、尖閣諸島周辺への領海侵入にも声高に抗議してこなかったが、今後は中国との付き合い方を抜本的に見直す必要がある。
 中国が主張する「中華民族の偉大な復興」「中台統一」より、一人の沖縄県民の生命や財産のほうが重い。沖縄周辺にミサイルを撃ち込む中国政府に対し、沖縄はそのことを遠慮なく発信していくべきだ。
 日本政府は南西諸島で陸上自衛隊の駐屯地整備を進めており、石垣島でも来春の開設が予定されている。着実に進めるべきはもちろんだが、中国の挑発激化も念頭に、開設後のスムーズな運用に向けた体制を確立する必要がある。

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