【視点】ゴルフ場を八重山の財産に

株式会社ユニマットプレシャスが石垣市で進めるゴルフ場建設計画が着工に向けて前進している。地域未来投資促進法に基づいて石垣市が策定した土地利用調整計画に8月末、県が同意し、予定地の農振除外や農地転用が実現する見通しになったためだ。
 ゴルフ場建設計画はアフターコロナに向けた観光の起爆剤として市が積極的に後押ししており、経済界も一致してバックアップの姿勢を示している。
 新設されるゴルフ場を八重山の財産にしなくてはならない。世界に誇れる美しいゴルフ場建設に向け、作業をスピードアップさせてほしい。
 石垣市では新石垣空港建設のため既存のゴルフ場が閉鎖され、以来、島内にチャンピオンコースのゴルフ場が存在しない状況が続いている。市はゴルフ場誘致に向け、複数の企業と交渉してきたが、ようやくユニマットが名乗りを上げた。
 予定地は多くの農地を含んでおり、従来の手続きではゴルフ場建設が難しかった。だが地域未来投資促進法を活用すれば、特例的に農振除外や農地転用を行うことが可能になる。
 市と県は同法に基づく基本計画を策定後、昨年10月から土地利用調整計画の策定に向けた協議に入った。だが県が大規模な農振除外に難色を示したため協議が難航し、県の同意を取得するまで10カ月もの時間を要した。
 市と県はゴルフ場建設計画に同意し、共同で地域未来投資促進法に基づく基本計画を策定したのだから、その後の事務手続きがこれほど緩慢なのはおかしい。県の対応は石垣市の不信を招いた。
 7月には、商工会や観光交流協会など、関係団体が手続きの早期推進を要請するため県庁を訪れた。しかし照屋義実副知事は新型コロナウイルス対策を理由に、直前になって面会をキャンセルし、地元から「ドタキャン」「離島軽視」などと批判の声が上がった。
 ゴルフ場建設計画は県、市が協力体制を組んで前進させなくてはならないのに、逆に両者のぎくしゃくした関係性が目立っているのは残念だ。ゴルフ場建設に限らないが、県には、もっと離島の現状に寄り添う配慮を期待したい。
 土地利用調整計画への同意を受け、関係団体からは一斉に歓迎の声が上がっているが、印象的なのはJAの反応だ。JAおきなわ八重山地区本部の石垣信治本部長は、ゴルフ場建設で農地が減少することに触れ「農地が少なくなることを喜んでいるわけではないが、地域のために賛成した」と述べた。
 農地を守る立場のJAとしては複雑な心境だろうが、石垣市の将来を考えた決断だということだ。農業関係者の思いも真摯に受け止めたい。
 予定地はラムサール条約登録湿地の名蔵アンパルが近く「アンパルの自然を守る会」などが建設反対を表明している。
 開発を進めるにあたって環境に配慮するのは当然だ。懸念を払拭するため、事業者も環境アセスの手続きをしっかり進めてほしい。

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