【視点】2期目も課題山積の玉城県政

 11日投開票の知事選は、午後8時の投票終了と同時に報道各社が一斉に現職、玉城デニー氏の当確を報じる「ゼロ打ち」で、あっけなく勝敗が決した。7月の参院選では玉城知事が推す現職と自公の新人が大接戦を演じたため、今選挙も玉城氏にとって厳しい戦いになるとの予想もあったが、ふたを開ければ自公が推す次点の佐喜真淳氏とは約6万票の大差がついた。
 玉城県政の1期目は新型コロナウイルス、首里城炎上、豚熱、軽石漂着などピンチの連続だったが、2期目も多くの課題が積み残されている。最大の難問は米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡る政府との対立だ。
 翁長雄志前知事が初当選した2014年知事選以来、沖縄は辺野古への賛否で揺れ続け、県と政府の険悪な関係ばかりが喧伝されてきた。政府とのスムーズな連携なくして沖縄振興は有り得ず、この問題にどこかで終止符を打たなくてはならない。
 普天間飛行場の返還に向け、現状では辺野古移設以外の選択肢が存在しない政治の現実がある。玉城氏が従来と同じく「移設反対の意思は1㍉もぶれない」と主張し続けるだけでは、8年間の反目が向こう4年間も続くだけで、終わりが見えない。玉城氏は県政トップとして、県民に打開策を示す必要がある。
 新型コロナ禍で打撃を受けた経済の再建は待ったなしだ。沖縄の新規感染者数は減少に向かい始め、観光客数も増加の兆しを見せている。観光回復を軌道に乗せるため、目に見える形で企業への支援を進める必要がある。政府が進める経済対策だけでなく、県も汗をかく決意を玉城知事のリーダーシップで示してほしい。
 今選挙でも離島振興がクローズアップされる機会は少なかったが、宮古や八重山の離島は沖縄観光の中核を担う戦略的に重要な地域である。過疎化の傾向がある竹富町や与那国町の定住環境を整備し、人口を回復するための施策は絶対に欠かせない。
 翁長前知事と同様に「八重山に来ない知事」と言われ続けた1期目を挽回するためにも、玉城知事にはこうした小規模離島で積極的に住民の要望を聞いてほしい。
 今選挙の得票率を見ると、玉城氏約51%、佐喜真氏約41%、下地幹郎氏約8%だった。佐喜真氏と下地氏の得票を合計すると玉城氏とは約1万1票の僅差となる。玉城氏への圧倒的信任という選挙結果ではない。
 佐喜真氏、下地氏の敗因は保守陣営の結束が崩れ、保守分裂選挙に突入したことにほかならない。
 早々に勝敗の行方が見えたことで、特に自公支持者の士気が下がった。保守陣営の内紛に選挙が左右された感は否めない。
 過去の知事選に比べ、辺野古移設に反対する県民世論の盛り上がりは感じられなくなった。玉城氏は「辺野古反対」を叫んでこの知事選に圧勝したわけでもなく、辺野古は県政の柱でも最優先事項でもない。玉城氏は知事として、まずは県民生活の安定に力を注ぐべきだ。

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