国の重要無形民俗文化財に指定されている西表島祖納・干立の「節祭(しち)」の奉納芸能「世乞い(ユークイ)」が14日、祖納、干立の両集落で行われた。芸能や船漕ぎの奉納が行われ、豊作への感謝と五穀豊穣、健康と繁栄を祈願した。この2年間は新型コロナの影響で集落内の住民のみで行われたが、今年は郷友会や近隣地域の代表者らを招いて実施。歴史あるミリク行列や黒布で全身を覆ったフダチミ、こっけいなしぐさで笑いを誘うオホホなどの奉納が執り行われた。
干立公民館(真謝隆一館長)は前の浜と干立御嶽で、祖納公民館(上亀直之館長)は前泊浜で、神を迎えるための船漕ぎやヤフヌティ(櫂踊)、棒術、獅子舞、ミリク行列、アンガー踊りなどを奉納した。
干立御嶽では結願祭も同時に開催され、神前拝礼や芸能を奉納した。続いて行われた節祭では、ミリク行列に人の心はお金では買えないことを表現したとされる干立独自の「オホホ」が登場。オホホは、「オーホホホホホホ」と繰り返し奇声を発しながら、札束をばらまいたり、来場者らに手招きしたりして、境内を闊歩(かっぽ)した。
前泊浜では二艘のハーリーを岸から海に放つ「舟うかべの儀」を行い、旗頭を先頭に奉納芸能を披露。ミリク行列の後、フダチミと称する2人を先頭に、黒の上衣に水色の鉢巻をした女性たちが優雅に「節(しち)アンガー」を行った。
祖納公民館の上亀館長は「自然の恵みをいただくための優れた知恵が様々な芸能を生み出し、伝統文化として発展、継承されてきた。素晴らしい伝統文化をつくり育ててきた先人に感謝と敬意を表し、優れた文化遺産を子々孫々まで引き継いでいく」と決意を示した。
節祭は毎年旧暦10月前後の己亥(つちのとい)の日から3日間行われ、農民の正月ともいわれている。