【視点】日本がリーダーシップ示した

 21日閉幕した先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、ホスト国である日本が国際社会で存在感を発揮した久々の機会となった。注目すべきは首脳声明で「国際社会の安全と繁栄に不可欠な台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認する」と明記したことだ。7カ国が一致し、中国の傍若無人と対峙する姿勢を示した意義は大きい。
 中国艦船が領海侵入や日本漁船への威嚇を繰り返している尖閣諸島(石垣市)周辺の状況に関しても「東シナ海および南シナ海における状況について深刻に懸念している」「力または威圧によるいかなる一方的な現状変更の試みにも強く反対する」と間接的ながら言及した。
 日本や沖縄だけの懸念事項ではなく、民主主義諸国全体の問題として、台湾や東シナ海が取り上げられた。領土的野心をむき出しにし、東アジアの平和をかき乱そうとたくらむ中国への大きなけん制になる。
 首脳声明では、チベット、新疆ウイグルの人権問題にも懸念を表明。香港で進む民主主義の破壊に対しても、高度な自治権を定める英中共同声明の順守を求めた。
 中国はG7で中国が取り上げられたことに反発。日本の駐中国大使を呼び出して抗議した。
 尖閣問題に関し、石垣市議会はたびたび中国に抗議決議しているが、中国側からの反応は一切ない。外交儀礼は別にして沖縄県民としての目線で言えば、中国の抗議など無視してしかるべきだろう。
 サミット最終日にはウクライナのゼレンスキー大統領が参加した。首脳声明でも、中国がロシアに対し、軍隊を撤退させるよう圧力をかけるべきだと指摘した。岸田文雄首相は「G7とウクライナの揺るぎない連帯」を示したと強調した。ロシアの侵略行為を許さないというメッセージを、改めて国際社会に発したことになる。
 核軍縮に関するG7首脳広島ビジョンでは、核兵器のない世界を「究極の目標」に掲げた。核兵器の放棄に踏み込まなかったことを批判する声もあるが、現実を見ると、G7以外の中国、ロシア、北朝鮮は核戦力の増強にまい進している。こうした国々も巻き込まなければ「核なき世界」は実現できない。
 だが、この国々にはそもそも核兵器が悪だという発想がなく、むしろ核による威嚇をエスカレートさせているのが現状だ。G7だけが一方的に核抑止力を否定することに意味はなく、むしろ危険ですらあると言える。
 広島でサミットが開催されたからこそ、核なき世界が「究極の目標」であるという理想をG7が共有できた。その点で、国際社会において日本が一定のリーダーシップを示したことは評価すべきだ。
 サミットには「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国・途上国も招待された。
 もはや先進国と呼ばれる7カ国だけでは世界の秩序を維持できない現実が存在する。中国もG7と同時期に、中央アジア5カ国と「中国・中央アジアサミット」を開催し、国際社会での影響力拡大を誇示した。
 21世紀は民主主義と平和ではなく、独裁と武力が国際社会を覆う暗い世紀になる可能性もある。民主主義の騎手とされる米国の国力は相対的に低下し、少子高齢化が進む日本は衰退の一途をたどっている。民主主義諸国が一致団結しなければ、この地球的な危機を乗り越えることはできない。

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