【視点】離島防衛に課題突き付け

 日本の離島防衛に大きな課題が突き付けられた。北朝鮮の「人工衛星」と称するミサイルが5月31日朝、発射されたのに、自衛隊は迎撃のため1カ月も前に石垣島に搬入した地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を南ぬ浜町に展開できず、迎撃の方法はPAC3だけではないが、悪く言えばミサイルに手も足も出なかった。こんな状況で沖縄を、さらには日本をミサイルの被害から守れるのか。自衛隊の思わぬ「弱点」に多くの国民が驚いただろう。
 PAC3を南ぬ浜町に展開できなかった最大の理由は、台風2号の襲来だ。防衛省は5月30日、PAC3を南ぬ浜町に展開すると石垣市に通知したが、発射機が倒壊するほどの暴風が吹く可能性もある。防衛省や自衛隊が展開の時期を慎重に見極め、身動きできずにいるうちに北朝鮮はミサイル発射に踏み切った。
 恐らく北朝鮮は日本のドタバタぶりを見て「離島を攻撃するなら台風シーズンに限る」と学習したのではないか。八重山は台風銀座であり、今回のような事態は一度では済まない。防衛省や自衛隊は早急に離島の気象を再検討する必要があるかも知れない。
 自衛隊の動きが緩慢だったのには、別の理由もありそうだ。PAC3を南ぬ浜町へ展開することには、地元から懸念の声が上がっていた。南ぬ浜町にはクルーズ船の岸壁があり、PAC3の展開とクルーズ船の寄港が重なってしまう恐れがあったからだ。こうした地元との摩擦も、展開の遅れに少なからず影響したはずだ。
 今回のミサイル発射では、北朝鮮の予告期間内に寄港がなかったため大きな問題にはならなかったが、今後、PAC3の展開と寄港が重なる可能性は十分考えられる。防衛省や自衛隊はPAC3の展開場所として別の場所を考えた方がいいのではないか。いずれにせよ地元の事情をよく考慮しないまま、前例踏襲で拙速に展開先を決めてしまったように見える。
 今後、新たな展開場所を探すにしても、なぜ石垣島だけ駐屯地内で展開できないのかも含め、地元への説明が必要だろう。住民の理解や支持なくして島は守れない。
 八重山には、北朝鮮よりはるかに大きい中国の軍事的脅威も迫っている。石垣駐屯地は3月に発足したばかりだが、南西諸島防衛は、まだ「万全」にはほど遠い。

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