世間には意見が二つに割れ、交差しないことがある。さしあたり八重山では、「ミサイル配備が抑止力になる」「ミサイルがあるから攻撃対象になる」の対立がその例だろう。そして、反対を唱える人々の声は常に大きく、アグレッシブ。容認する側は、押され気味だ▼17日に石垣市内で開催されたジャーナリスト、櫻井よしこ氏の講演会では、中国の脅威、台湾有事の現実味、そこにロシアが結びつく恐れに対し、数字や実例を示しながら、なぜ八重山にミサイル配備が必要なのか、自衛隊が強くあるべきか、が穏やかな口調で語られた▼終了後には「ミサイルは必要だと思いながら、ママ友たちに理由をうまく説明できずに言い負かされていた。これで自信をもって私の意見が言える」という声が聞こえてきた。容認する声が少しでも大きくなれば、平和を発信すれば戦争はなくなると、どこかの知事のようなお花畑論にうんざりさせられることも減るだろう▼メモを取る手が止まったのは、櫻井氏が「歴史上、初めて中国、ロシアと二つの核保有大国と向きあうことになった米国が、核を使う前提に立ったときは必ず同盟国に相談がある」と語ったときだ。意味するところは、核使用で起きる悲劇の分担。核の傘に守られているということは、責任の共有でもある。そんな厳しい覚悟は誰にも持てない。理屈の通じない大国には、防衛力を高め、抑止力を示し続けていくしかない。