【視点】慰霊の日 沖縄の守り万全に

「命どぅ宝」という沖縄でよく知られた言葉を改めて深く胸に刻む日である。きょう23日は沖縄戦で旧日本軍の組織的戦闘が終結した日とされる「慰霊の日」だ。
太平洋戦争末期の熾烈な沖縄戦で、軍民合わせて約20万人余が犠牲になった。県民の多くが、両親や祖父母から悲惨な戦争体験を聞いて育った。県民の平和を希求する心は強い。
だが一方で「台湾有事」勃発の懸念が増大するなど、沖縄を取り巻く国際情勢はきな臭さを増している。沖縄にとって最大の不安要因はもちろん、中国の際限ない軍事力拡大だ。
石垣市の尖閣諸島周辺で領海侵入を繰り返し、台湾を包囲した軍事演習の際には八重山周辺海域にミサイルを撃ち込んで威嚇するなど、その軍事行動と領土的野心は、明らかに沖縄を標的に入れている。日本の安全保障政策において、沖縄の防衛力強化は喫緊の課題だ。
沖縄では「軍事力に頼らず、平和的な話し合いで紛争を解決すべき」という根強い「平和外交」信仰がある。平和外交を第一とすべきは当然のことだが、それが行き過ぎると非武装や中立の主張、抑止力の否定といった非現実的な反基地イデオロギーになってしまう。
その代表格が、沖縄独自の「外交」で平和を構築する方針を示している玉城デニー知事かも知れない。玉城知事は岸田文雄政権が保有を決めた「反撃能力」に反対する要請も行った。「オール沖縄」県政のもと、日本の安全保障政策を正面から否定するような動きが沖縄の主流になっている現状は残念だ。
最近、中国の習近平国家主席が「琉球」に言及する発言を行い、波紋を広げた。習主席の真意に関してはいろいろな解釈が可能だが、玉城知事は「(中国と沖縄の)交流や歴史について、かなり深い見識をお持ちだと受け止めている」と発言を評価した。
尖閣諸島の侵奪を図り、県民に大きな不安を与えている国の指導者の「見識」をたたえる知事の発言は、特に離島住民には理解し難い。知事の尖閣問題に対する関心の薄さを露呈したとも言える。近く知事の訪中が予定されているが、中国政府に懐柔され、県民の利益を見失うことがないようにしてもらいたい。
県内では、北朝鮮のミサイル発射に備え、八重山や宮古に展開しているPAC3(地対空誘導弾パトリオット)に対しても否定的な意見がある。
「ミサイルの破片が落ちてくるはずはなく、PAC3の展開は沖縄の軍事要塞化に過ぎない」という理由だ。
だが北朝鮮が15日、弾道ミサイルを発射した際、日本海で操業していた鳥取県船籍の漁船が二十数キロ離れた場所から大きな音を聞き、鳥取県の平井伸治知事は「被弾しかけた」と証言した。ミサイルの破片が先島諸島に落下する可能性を杞憂だと笑い飛ばすことはできない。PAC3の配備は妥当だ。
沖縄戦に倒れた先人たちは、何よりも「子や孫に二度と同じ思いをさせたくない」と願っているはずだ。日本の国境の砦でもある沖縄の守りを万全にすることが、先人たちの無念に報いる最善の道である。

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