前評判が高かった「玉城劇場」。幕が下りれば、肩透かしをくらった印象しか残らない。「尖閣についての話は出なかったので、私からもあえて言及することもなかった」。玉城デニー知事が尖閣諸島に触れなかった釈明が情けない。中国の李強首相も、聞かれれば、同じ言葉を口にして、かわしたのではないだろうか▼超大国のナンバー2と面談し、切り出した要請が沖縄・中国間の直行便復活とビザ手続き緩和。「環境が改善されるよう進めたい」。それを「前向きな答弁を引き出した」と評価する声もあるようだが、軽くあしらわれたと理解するべきだ▼ナンバー2の指示ならば、短時間で実現するだろうが、そもそも航空機を飛ばすことが「交流深化」なのか。中国は、世界各地に「警察拠点」を設置して、スパイ活動や中国人の発言、行動に目を光らせている。往来が増えれば、ここぞとばかり、国防の最前線に位置する八重山に「警察拠点」を設置されることを警戒するべきではないか▼習近平国家主席の琉球の歴史に触れる発言、玉城氏が受けた異例の厚遇。そこに中国側の真意を見出す分析が必要だ。国家の存在の基盤となる安全保障の課題を「話が出なかった」ですませ、地域交流、経済交流ばかりにスポットライトを当てる。その陰には沖縄の分断工作が潜んでいることに気がつかないのか。