石垣市は10日、ふるさと納税の返礼品として提供を始めた「尖閣アカマチ」の注文が303万円分に達したと明らかにした。アカマチ約122㌔分に相当し、市が目標としていた「漁業者が赤字を出さずに尖閣周辺海域に出漁できる注文数」をクリアしたという。市は15日でいったん注文を締め切り、八重山漁協に出漁を依頼。同漁協所属の漁船が早ければ10月中にも尖閣諸島周辺海域に向かう。
市企画政策課によると、尖閣アカマチの9日時点の注文数は10万円コース(アカマチ約5㌔)8件、5万円コース(同2㌔)11件、3万円コース(同1㌔)56件で、計75件。
市が8月、尖閣アカマチをふるさと納税の返礼品に加えた時点では10万円コースしかなく、高額のため注文数は伸び悩んだ。
しかし9月に5万円コースと3万円コースを新設し、メディアにも取り上げられたことで、注文数が伸びた。
八重山漁協によると、石垣島から約170㌔離れた尖閣周辺海域への出漁には1往復約10万円の燃料費がかかる。人件費もコストに上乗せされる。
注文数が伸び悩んだ場合は出漁しても赤字に陥る恐れがあり、市は9月議会に上程した一般会計補正予算で、漁業者が赤字を出しても補てんできるよう、30万円を計上していた。
しかし、尖閣アカマチの注文が300万円を超えたことで、市の赤字補てんなしに出漁できる見通しになったとしている。
漁業者が水揚げした尖閣アカマチは全量、市が買い取り、ふるさと納税の返礼品として注文者に発送する。通常、水産物の販売はセリを通すため、価格が不安定だが、尖閣アカマチに関しては定額での買い取りが保証されているため、漁業者にとっては確実な収入源となる。
現在、尖閣周辺海域では中国海警局の艦船が常駐し、出漁する日本漁船への威嚇を繰り返しており、漁船は巡視船の警護を受ける必要がある。
加えて多額のコストがかかることもあり、尖閣周辺から漁業者の足が遠のいているのが現状。市はふるさと納税の仕組みを通じ、出漁を活発化させたい考えだ。
今後、冬にかけて尖閣周辺海域の天候が悪化するため、市は尖閣アカマチの注文は15日でいったん締め切る。天候回復が見込める来春以降の出漁と商品の発送に向け、年内にも新たな注文の受け付けを開始するという。