「えんどうの花」などで知られる石垣島出身の作曲家、宮良長包(1883~1939)のひ孫が、チェコを拠点にピアニストとして活躍している。那覇市出身の会田牧子さん(46)で、多数のコンクールで入賞し、コンサート活動や後進の指導に力を入れる日々。小さな島が生んだ偉大な才能は、世界を舞台に脈々と受け継がれている。
長包の長女に当たる祖母、孫に当たる母とも音楽教師で、自身も幼いころからピアノの手ほどきを受け、早くからプロの演奏家を志した。
10代のころ、父が日本人学校の校長としてチェコに赴任し、共に移住。現地のプラハ音楽院を経て、国立プラハ芸術アカデミー学士・修士課程を卒業した。
国際的なピアノコンクールで入賞を重ね、ソロ活動や、著名なオーケストラなどとの共演で実力を発揮。現在はプラハインターナショナル芸術学校で、曾祖父と同様、音楽教育にも力を入れている。
長包の存在について「子どものころは、特に意識したことはなかった」と振り返る。だが同じ音楽家としてキャリアを重ねる中、黎明期の沖縄音楽界で、長包が成し遂げた空前の功績への理解が深まった。
「琉球音楽が主流だった時代に西洋音楽のエッセンスを取り入れ、独特の音楽を築いた。長包が亡くなってこれだけ時間が経っているのに、多くの人たちに愛されている。すごいことだと思う」。誇りと喜びを感じた。
19日に那覇市で開かれた「宮良長包生誕140年記念音楽祭」に多忙なスケジュールの合間をぬって出演。初めて曾祖父の曲を演奏した。
曲目は長包の研究家、大山信子さんが新発見した歌曲3曲を、指揮者の高宮城徹夫さんがピアノ協奏曲として編曲したメドレー。
高宮城さんが指揮する琉球交響楽団との共演で、素朴で美しいメロディと、ピアノの冴えわたるテクニックが聴衆を魅了し、終演後は大きな拍手が送られた。
音楽の素晴らしさを沖縄や世界の人々に伝えたい―という長包の思いを、直系の子孫として100年越しに受け継ぐ。
「曾祖父の曲を弾くことができて幸せ」とほほ笑み「長包の曲には、昔聞いたことがあるような懐かしさを感じる。これからも長包の音楽を愛していただきたい」と期待した。