住民に「軍事拠点化」の誤解 空港強化、丁寧な説明欠かせず

波照間空港の待合所=2022年8月

 波照間島の住民が竹富町に対し、波照間空港の軍民共用化反対を要請した。八重山の3空港を「特定重要拠点」(特定利用空港・港湾)と位置づけ、政府主導で機能強化を図ろうとする3市町の動きに対し、住民サイドで「待った」をかけようとする動きが活発化しつつある。背景にあるのは、特定重要拠点に指定された場合、空港が軍事拠点化されるという誤解だ。
 石垣市でも基地反対派の市民団体が特定重要拠点の指定阻止を訴え、要請行動を始めている。石垣市議会では革新系の野党から「軍民分離」を掲げて特定重要拠点に反対する声が上がる。政府は3市町と連携しながら、住民に対し、特定重要拠点の必要性を丁寧に説明する必要がある。
 特定重要拠点の指定は安保3文書の改定に基づき、有事を見据え、自衛隊や海上保安庁が円滑に利用できるよう、空港・港湾の機能を強化する取り組みだ。
 自衛隊などによる抑止力や対処力向上につながるため、沖縄の守りを固める上で、特定重要拠点の構築は欠かせない。
 一方、悲惨な沖縄戦を経験した県民の間では「空港や港湾が軍事拠点化された場合、有事の際は攻撃対象になる」との懸念も根強い。
 これに対し、特定重要拠点の仕組みを利用して空港滑走路の延長を図る石垣市は「現在でも緊急時には自衛隊は空港を利用できる」(中山義隆市長)と指摘。特定重要拠点の指定と「攻撃対象論」は無関係と訴える。
 むしろ空港機能を強化することで、有事の際の住民避難がスムーズに進むほか、災害の際の救援物資搬入能力などもアップし、住民の安心安全につながると主張している。
 政府は、特定重要拠点に指定されても、空港・港湾は平時には従来通り民間の利用が主となると理解を求める。空港機能の強化は有事対応だけでなく、誘客の拡大などを通じ沖縄振興にも資すると強調する。
 ただ八重山では、特定重要拠点に対する一般住民の関心はまだ低く、内容の理解も進んでいない。
 3市町の空港を特定重要拠点に指定するには管理者である県の同意が必要だが、玉城デニー県政は現時点で応じない考えだ。
 3市町が特定重要拠点の指定による空港機能の強化を今後も求めるなら、まず住民の理解を得て、気運を盛り上げていく努力が欠かせない。現状のままだと滑走路延長に冷淡な県に突き放され、地元では反対運動に足をすくわれ、双方から「挟撃」される形で滑走路延長の構想そのものが頓挫しかねない。(仲新城誠)

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