石垣市が4月25日から3日間、尖閣諸島周辺で洋上調査を行い、生態系の破壊が進んでいるとされる魚釣島の現状などを確認した。同行した本紙記者は、魚釣島で生息するヤギの写真撮影に成功した。
市の調査はテレビや新聞で大きく報道され、尖閣諸島に対する内外の関心を高めた。一般世論に対し、尖閣諸島が日本固有の領土であり、石垣市の行政区域であることを改めて啓発した意義は大きい。
魚釣島では民間の政治団体が1978年に持ち込んだヤギが繁殖し、植生の荒廃が進んでいる。市が実施した過去2回の調査でも、斜面の崩落が確認されたほか、大量のごみが海岸に漂着している実態が明らかになった。
生態系の破壊を食い止めるには、研究者や行政の担当者らが上陸して現状をつぶさに調べ、ヤギ駆除などの対策を取る必要がある。調査船に乗った中山義隆市長は、改めて上陸調査の必要性を訴えた。
中国政府は尖閣諸島の領有権を一方的に主張しており、周辺海域で艦船4隻を常駐させ、領海侵入や日本漁船への威嚇行為を常態化させている。
現在の緊迫した国際情勢の中で、日本人がただちに上陸することは現実的ではないかも知れない。だが上陸の必要性を常に訴え、世論を喚起し続けることは必要だ。そして、いずれは必ず上陸し、領土保全に必要な措置を講じなければならない。
調査船は2回にわたって石垣島から出航し、2回目の出航時には国会議員らも同乗した。これに対し、中国海警局の艦船は2日間にわたって領海侵入を繰り返し、調査船に接近しようとする動きを見せたが、海上保安庁の巡視船が阻止した。
領海侵入した中国艦船2隻に対し、海保は10隻以上の巡視船を動員して調査船の護衛に当たったという。市の調査をサポートするため、万全の態勢で臨んだことがうかがえる。
ただ、中国側も尖閣周辺で多数の艦船を動員できる能力は持っている。調査への妨害行為をある程度自制したことは確かだろう。
中国艦船は、同じく領有権を一方的に主張する南シナ海では、フィリピン巡視船に放水するなど傍若無人の態度を見せる。
尖閣周辺での行動は現時点で、そこまで過激化していない。それは米国政府が尖閣諸島を日米安全保障条約の適用範囲内であると明言し、尖閣を日本と共同防衛する構えを見せているからではないか。
日中の国力差が日増しに拡大している現状を考えると、日米同盟の抑止力が、辛うじて中国の沖縄侵入を防いでいるという見方もできる。
中国政府は石垣市の海洋調査に対し「挑発行為であり、事態をエスカレートさせる」と反発する声明を出した。
本末転倒の物言いである。尖閣周辺に艦船を常駐させる中国の行為こそ、日中友好を阻み、両国の緊張関係をエスカレートさせている。自らの行為を棚に上げ、日本政府や石垣市に責任転嫁するような言動は卑劣だ。
中国艦船のたび重なる領海侵入に対し、石垣市議会は繰り返し抗議してきたが、中国側にしても、市の抗議に反応したことは一度もない。石垣市としては中国の抗議などは無視し、委縮せず今後も着実に調査を継続すべきだ。