【視点】県議選 玉城県政への信任投票

 沖縄県議選は6月7日告示、同16日投開票される。13選挙区で48議席が争われ、沖縄本島では続々と予定候補者の事務所が設置されるなど、前哨戦が激化している。石垣市区は定数2に2人が立候補を表明しており、無投票となる公算だ。
 県議選で最大の争点は玉城デニー県政に対する評価だ。現在の勢力図は与党と野党・中立が同数で、採決に加わらない議長を野党側が出しているため、1議席差で与党が優位に立つ。
 県議会では、玉城県政が提出した予算案などを巡って与野党が対立する場面が多い。与党多数のため、これまで県の提案が否決されることはほぼなかった。
 県議選で与党が多数を維持すれば、玉城知事は県議会の後ろ盾を得て、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対など、さまざまな政策を従来通り推進できる。
 野党側が多数を確保すれば、今後、玉城知事の重要政策が議会で否決される場面も十分に想定される。残り2年の任期を残し、知事は「死に体」に近い状況に追い込まれる可能性すらある。つまり事実上、県議選は玉城県政に対する信任投票の様相を呈している。
 玉城県政は、辺野古移設をはじめとする安全保障政策で自公政権と厳しく対立している。政府とのすれ違いは、沖縄振興策にも影を落としているとされる。こうした現状を有権者がどう評価するかがポイントになりそうだ。
 与党の予定候補者は、沖縄で進む自衛隊の強化など、いわゆる「南西シフト」に極めて批判的であることも注目される。
 玉城知事は、うるま市で防衛省の自衛隊訓練場施設建設計画が断念に追い込まれたことを追い風に、県内でこれ以上の自衛隊施設新設を認めない姿勢を示した。これを受け与党の各予定候補者は、日本の抑止力に歯止めを掛けることで、近隣諸国との平和外交を推進する政策を前面に掲げている。
 一方、野党の予定候補者は自公政権と連携した経済振興策を中心に打ち出す。ただ自民党の「裏金」問題で岸田政権に対する国民の視線が厳しさを増しており、沖縄でも自民党に対する逆風が強まっているとの見方がある。
 与野党とも県議選を2年後の知事選に向けた試金石と位置付けており、特に自民党は悲願の県政奪還に向けた第一歩として県議選を重視する。
 沖縄は安全保障問題で全国的にもクローズアップされる機会が多い。県議選の結果は沖縄にとどまらず、日本全国の安全保障や外交にも波及する性質を持つ。
 八重山では保革が2議席を分け合う構図が長年定着し、2020年の前回県議選に続いて今回も無投票となる見込みだ。
 離島振興や「特定利用空港・港湾」指定の是非など、論議すべき重要テーマは目白押しだが、選挙ムードは低調で盛り上がりを欠く。
 強いて言えば、無投票にも政治の安定化や有権者の分断回避といったメリットがないわけではない。
 だが毎回のように無投票が続いていては政治のマンネリ化は避けられない。八重山から県政に通用する新たな人材の輩出もできなくなる。政治も経済も競争の原理こそ最重要である。

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