【視点】関係悪化 中国は責任自覚を

 日中関係が先鋭化している。中国広東省深圳の日本人男児刺殺、中国軍機の領空侵犯、中国空母の与那国島―西表島間航行と、日本の国民感情を逆なでする事件が続発しているためだ。中国は両国関係悪化の全責任が自らにあることを自覚し、行動を改めるべきだ。
 男児刺殺事件を巡っては、上川陽子外相が中国の王毅外相との会談で、一刻も早い事実解明と日本への説明、悪質で反日的なSNS投稿の取り締まりなどを要求した。
 だが、王氏は事件について「偶発的な個別事案」との主張を譲らなかった。福島の処理水海洋放出を持ち出して、逆に日本を非難するような態度さえ見せた。
 中国軍機の領空侵犯と中国空母の与那国島―西表島間航行は、日本への露骨な軍事的威嚇だ。防衛省は領空侵犯と中ロ艦艇の宗谷海峡通貨が同時期だったことから、中ロが連携して日本への示威行為に出たと見る。
 八重山では台湾有事を見据えた避難計画策定やシェルター整備の動きが進んでいる。周辺海域を中国空母が通過したことは、離島住民の不安に拍車を掛ける。
 中国の相次ぐ挑発行為への対抗措置として、日本は海上自衛隊の護衛艦「さざなみ」を台湾海峡で航行させた。中国国防省の報道官は「日本は軍国主義の道を再び歩む傾向を鮮明にしている。戦後の国際秩序を破壊している」と反発したが、筋違いも甚だしい。中国こそ、アジアの平和を脅かす自らの行動を反省しなくてはならない。
 玉城デニー知事は日米の抑止力強化に疑問を呈し、中国との緊張緩和を訴えている。今月の訪米でも米政府に対し、アジアの緊張緩和を目指す県の「地域外交」の取り組みを説明し、理解を求めた。
 対中融和的な玉城知事の姿勢に呼応するように、中国の駐日大使らが県庁を訪れており、今、中国と沖縄は蜜月関係に見える。
 だが石垣市の尖閣諸島周辺では、中国艦船の常駐と領海侵入が続く。八重山から尖閣周辺に出漁する漁業者は、中国艦船から操業妨害を受け続けている。
 中国・遼寧省大連市の国立大学が「琉球研究センター」を設立し、学問的立場から日本の沖縄領有権を見直そうという動きを見せているとの報道もあった。台湾有事を見据え、日本を牽制する狙いがあるようだが、事実だとすれば沖縄県民を愚弄している。
 玉城県政が中国に寄り添う姿勢を見せれば見せるほど、中国は傲慢な態度に出ているように思えてならない。日中間の問題を平和的な外交で解決すべきなのは当然だが、根底に毅然とした姿勢がなければ、いいように利用されるだけだ。特に玉城知事が尖閣問題で中国政府に抗議しないのは、百害あって一利なしと言わなくてはならない。
 日本の新首相には自民党の石破茂元幹事長の就任が決まった。
 石破氏は安全保障政策に精通しているとされる。次期米大統領が誰になるかという不安要素もあるが、日米同盟を基軸に、中国の脅威に対抗する日本外交の方針を堅持してほしい。

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