▽信頼失墜
県議会が設置した米国ワシントン駐在問題に関する百条委員会の参考人招致で、県が株式会社設立に伴う法的手続きを軽視していた実態も次々と明るみに出た。
県庁内で株式会社設立に関する意思決定の文書は見つかっておらず、玉城デニー知事ら県首脳は駐在事務所が株式会社だったことを知ったのは設立から9年後の2024年と答弁。外見上、株式会社設立は「誰がいつ決めたか不明で、本庁のあずかり知らぬこと」扱いだ。
百条委でその事実を突きつけられた参考人の山里氏は「私はものすごいプレッシャーの中で、手探りで(法人登録を)やらざるを得なかった。重圧に耐えながらやってきたことを、本庁はこんなにも軽く扱っていたのかと寂しく感じている」と声を落とした。
さらに駐在事務所の2代目所長が「株券の公有財産登録をやっていない」と漏らしたことを暴露。「何で8年も放っておくのか」と憤りをあらわにした。山里氏によると、この件を問われた2代目所長は県の担当課に登録を指示したと釈明したが、実際には登録は行われていなかった。
2代目所長は法人登録の書類閲覧を副所長にも許さなかったという。山里氏は重要書類が「ブラックボックス化」していたと指摘した。
駐在事務所を巡っては、株式会社の社長、副社長でもある駐在職員が、地方公務員法に反し、県職員が会社役員を兼ねる際に必要な営利企業従事許可を取っていなかったことも判明している。
山里氏は県庁内で「営利業務は一切やっていないので、許可は取らなくていい」という想定問答を「見たことがある」と発言。「この認識が誤りで違法行為と気づかされた。県民の信頼を失墜したことをお詫びしたい」と謝罪した。
▽自浄作用
12日開会する県議会2月定例会では、新年度予算に駐在事務所の活動事業費を計上したことに野党・自民党が猛反発した。県に予算取り下げを求めて審議拒否も辞さない構えで、駐在事務所は存廃を問われる重大な局面を迎えそうだ。
百条委で山里氏は「ここまで指摘されたら駐在事務所の見直しは避けられない」と述べたが、事務所の存続自体は要望した。
玉城知事は駐在事務所を巡る問題を手続き上の不手際として処理したい考えだ。昨年12月、改善策として株式会社設立の追認、株券の公有財産登録、駐在事務所職員への営利企業従事許可を立て続けに行った。
今年1月には弁護士など外部委員で構成するワシントン駐在事務所問題調査検証委員会を設置し「自浄作用」のアピールに努める。
だが「オール沖縄」県政では、辺野古移設反対という政治目的を最優先し、玉城知事が最高裁判決に従わないという事態も起きている。問われているのは基地反対のためなら違法行為も辞さないという「オール沖縄」県政の体質ではないか。(仲新城誠)