【百条委員会(上)】知事の「実績づくり」優先か 法人設立の法的手続き軽視 米事務所問題

 沖縄県の米国ワシントン駐在事務所が株式会社として設立され、地方自治法などに違反して運営されていた問題で、県議会が設置した調査特別委員会(百条委員会、座波一委員長)が7日、初代所長と初代副所長を参考人招致した。2人は駐在事務所設立当時の内部事情を証言。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設反対を米国で発信するという翁長雄志知事(当時)の実績づくりを優先し、県が法人設立に伴う日本国内の法的手続きを軽視した実態が浮き彫りになった。
 ▽短兵急
 「翁長知事が駐在事務所を設置すると公約していたので『(米国に)行け』という感じ。何をすればいいかも分からない」
 参考人で初代副所長の山里永悟氏(現土木総務課長)は、2015年5月、駐在事務所が設置された当時の職員の困惑を明かした。
 山里氏は3月に米国異動の内示を受け、4月には「着の身着のまま」で米国に向かった。翁長氏の初訪米に合わせ、5月には駐在事務所を設立するという短兵急なスケジュールだった。
 駐在事務所が米国で政治活動するには、外国の代理人に義務付けられたFARA(ファラ)登録を行わなくてはならず、県は駐在事務所を新法人として設立する必要に迫られた。山里氏は、知事の初訪米に間に合うよう「手探りの中で法人登録を急ぐことになった」と振り返る。
 こうした経緯でスタートした駐在事務所「ワシントンDCオフィス」は株式会社の形態を取った。その理由について、百条委で初代所長の平安山英雄氏は「ワシントンの弁護士が知恵を絞って、苦肉の策で設立したのではないか」と説明。ただ自身はあくまで「株式会社ではなく特殊法人」の認識だったと強調する。
 ▽ゴーサイン
 株式会社設立直前の同年5月1日。山里氏によると、駐在事務職員と翁長氏、当時の安慶田安男副知事、池田竹州基地対策統括監(現副知事)らが同席したウェブ会議が開かれた。
 山里氏は駐在事務所の法人登録について説明したが、出席者の関心は、月末に迫った翁長氏の初訪米に集中していたという。
 法人登録は5月12日に米当局から認められた。平安山氏は登録書の原本を県庁に持参し、翁長氏に報告。山里氏が百条委に資料として提出した6月2日付の県紙「沖縄タイムス」で、その際の様子が記事になった。翁長氏に直接手渡された登録書には、英語で法人が株式会社であることが明記されていた。
 県が株式会社設立に当たって出資した千ドルは課長級職員の決裁で支出可能。県は当時の決裁文書が見つからないこともあり、県議会での答弁でも、株式会社設立を決裁したのは誰か明言してこなかった。
 だが山里氏は「平安山所長が対面で説明しているので、知事はご存じだと思う」と証言。平安山氏の発言と食い違いがあるものの、いずれにせよ株式会社設立に「ゴーサイン」を出したのは最高責任者である翁長氏本人だった可能性が濃厚になった。

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