八重山防衛協会や同自衛隊家族会、自衛隊隊友会八重山支部は11日夜、2025年防衛講話・新春の集いを開催した。講話では、航空自衛隊南西航空方面隊の芹川武也幕僚長(一等空佐)が講師を務め、南西地域の安全保障環境や同部隊の任務・取り組み、ウクライナ情勢などを踏まえた防衛上の課題を指摘した。
芹川氏は、南西航空方面隊が那覇基地に司令部を置き、戦闘機による対領空侵犯措置(スクランブル)やレーダーによる警戒監視、地対空ミサイルによる防衛任務を行うと説明。
中国やロシア、北朝鮮の軍事力も分析。中国が持つ戦闘機や拠点、ミサイルの数と日本側の数を比較し「我が国は不利」と指摘した。
中国は単独でも台湾周辺だけでなく、先島諸島周辺も含めて演習を繰り返し、空母や無人機の就役・投入を行っていると説明。空自の戦闘機から撮影した中国機の写真を見せながら飛行経路や機種などを解説した。
「中国が空母の3隻運用体制を確立させた場合、常に1隻は西太平洋で活動する可能性がある」と分析。南西方面隊は「東シナ海やバシー海峡(台湾・フィリピン間)、西太平洋の3正面での対応が強いられる」と述べ、負担が増えるとした。
ロシアは中国と共に共同で日本周辺空域で軍用機を飛行させ、北朝鮮はミサイル技術の進歩に取り組んでいるとした。
国籍不明機の領空侵犯を防ぐスクランブルについて「最近はおおむね(年間に)700回を超える。6割強が中国機への対処」と説明。空自は24時間365日体制で警戒監視を行うと胸を張った。
ロシアによるウクライナ侵攻について「相手が同じ価値観とは限らない。一度始まった戦争は終結が困難」とし、抑止力を示す重要性を強調。日米同盟だけでなく、豪州やインド、EU諸国などの同志国と連携し「一国では対応が困難な状況に陥らないよう安全保障環境を構築する」と力を込めた。
質疑応答では、来場者からドローン(無人機)の軍事利用が他国で進む中、防衛省・自衛隊の取り組みを問う質問があった。
芹川氏は空自が導入予定の次世代戦闘機はドローンを随伴させると説明。防衛省では、AI(人工知能)を用いた分析を進めるチームが発足したと紹介した。