沖縄県の米国ワシントン駐在事務所は日米両国で違法性が強く疑われる事態となり、閉鎖に追い込まれる。「オール沖縄」県政の生みの親、故・翁長雄志前知事の「レガシー」に傷がつき、玉城デニー知事の政治的打撃は大きい。
▽違法性
「設立手続きに重大な瑕疵(かし)があることは明らか」「瑕疵が連鎖する形で、その後の運営も含めて違法となる可能性は否定できない」
28日、県が設置した調査検証委員会が公表した報告書は、駐在事務所の存在そのものの適法性に疑問を呈し、事実上、県に閉鎖を迫る衝撃的な内容。この日、県議会で駐在事務所の活動事業費を全額削除する自民党の修正案が可決されたことを受け、再議権行使を検討していた玉城知事は厳しい表情で報告書を受け取った。
駐在事務所は2015年、米軍普天間飛行場の辺野古移設反対を米国に直接訴えようと、当時の翁長知事の肝入りで設立された。
実態が株式会社であることは公表されなかった。24年以降の県議会で、県が出資法人の経営状況を議会に報告する義務を怠った地方自治法違反、兼業許可を出さないまま駐在職員に会社役員の身分を兼ねさせていた地方公務員法違反が発覚していた。
報告書ではこれらの問題に加え、駐在職員が米政府にビザ取得を申請した書類の虚偽記載、駐在事務所の委託業者が法律事務所に業務を再委託した行為が、ワシントンで禁止されている「非弁行為」に該当する疑惑に言及した。
会社の発起人として設立業務を行った法律事務所の弁護士が、正当に県の代理権を持っていたかにも疑問を投げ掛けた。
さらに、株主総会や取締役会の議事録不存在、米国で政治活動を行うための「FARA登録」に当たってのコンプライアンス違反、税法上の問題や懸念を列挙した。自民党は「法律違反のオンパレードだ」(下地康教県議)と批判する。