▽前知事の責任
米事務所問題で沖縄県が設置した調査検証委員会による責任の追及は、当時の県政トップに及んだ。報告書では駐在事務所設立が知事決裁事項だったこと、翁長雄志前知事が株式会社設立を認識していた可能性が高いことを認定。「県としては、意図的に決裁手続きを取らなった可能性も否定できない」と踏み込んだ。
翁長氏の公約実現が絶対視された結果、法律の調査を怠ったまま、駐在事務所設置が「拙速に進められたとの印象を拭えない」とも批判した。
翁長氏は「オール沖縄」勢力の盟主として基地問題で厳しく政府と対立し、知事在職中に死去。現在でも「オール沖縄」勢力の支持者から強い尊敬を集める。報告書に対しては与野党から「予想以上に厳しい内容だ」と驚きの声が上がった。
▽暫定予算
自民党の予算修正案が可決された28日は、年度末ぎりぎり。玉城知事が再議権を行使した場合、予算修正案、原案とも成立しないまま新年度を迎え、県が暫定予算を組まざるを得ない事態も予想された。
自民党は再議に備え、予算修正案成立に必要な3分の2の賛成確保に向け水面下で中立、与党と交渉。「県民生活を守るため」(与党)として与野党、中立とも暫定予算の回避では一致し、与党の一部が自民党の修正案支持に動く可能性も取り沙汰された。
玉城デニー知事は28日夜、調査検証委の厳しい報告書と暫定予算回避の必要性を理由に、再議の断念を表明。同時に「必ず、新しい事務所がどこから見ても曇りのない状態でスタートできるよう取り組む」と近い将来の駐在事務所再開を明言した。
だが議会では玉城県政に批判的な野党、中立が多数を確保しており、再開のハードルは高い。
県議会で討論に立った公明党の高橋真氏は「長年にわたって重大なリスクを放置していた玉城知事の責任は重い。行政の信頼を失墜させる重大な過失だ」と糾弾した。
自民党の大浜一郎県議は取材に「県は再開を言う前に、今までの問題をきれいにしてほしい。我々は駐在事務所が違法状態で活動した9年間の支出に対し、返還請求も視野に入れている。百条委員会での追及はこれからだ」と語気を強めた。(仲新城誠)