【視点】「オール沖縄」存在意義失われた

 「オール沖縄」勢力の連敗ドミノが止まらない。
 うるま市長選は自公が推す現職、中村正人氏が玉城デニー知事に支援された元県議、照屋大河氏らを破って再選を決めた。県内11市で「オール沖縄」勢力の市長がゼロという状況は今後も続く。
 「オール沖縄」勢力は県民の信を失っている。さらに言えば「オール沖縄」勢力の存在意義そのものが失われている。玉城県政はこの現状を真正面から受け止め、基地反対に偏重するのではなく、県民生活向上を重視した政治に舵を切るべきだ。
 うるま市長選は「自公対オール沖縄」という従来の構図に加え、自民県連会長などを歴任した元県議、照屋守之氏が出馬したことで三つどもえとなり、不透明感が増した。
 保守分裂で現職不利という見方もあったが、中村氏を支える自公系勢力の離反はなく、かえって「オール沖縄」をはじめとする反現職勢力が分裂した形になり、結果的に大差がついた。
 「オール沖縄」勢力は昨年の県議選で大敗して以来、主要選挙で1年近く白星がない。米軍普天間飛行場がある宜野湾市、エース級とされる県議を擁立した沖縄市、「オール沖縄」の市長が唯一在職していた宮古島市で相次いで敗退。浦添市長選では統一候補すら立てられなかった。
 知事選や国政選挙では優位に立つが、市長選では弱いという傾向は以前からあった。しかし最近の市長選を見ると、いずれも「オール沖縄」勢力の弱体化を露呈するような負け方が続いており、情勢は以前よりも深刻といえる。
 最大の要因は「オール沖縄」勢力の看板政策である普天間飛行場の辺野古移設反対を争点化できなくなったことだ。工事の進捗に加え、軟弱地盤の改良工事を巡る訴訟で最高裁の判断が出て、法廷闘争も決着したためである。
 沖縄は観光こそ好調だが、近年の物価高騰はコスト高に悩む離島県にさらなる負担増を強いており、有権者の間では先行きへの不安が広がっている。基地問題で国と不毛な対立を続ける「オール沖縄」県政の統治能力に疑問符が付きつけられている。
 沖縄の政治は長く保守対革新という構図で語られてきたが、この10年の対立軸は自公対オール沖縄に変化した。しかし辺野古移設問題が争点にならなくなる中で、最近の主要選挙は事実上、保守対革新に先祖返りしている。政治集会やメディアで「オール沖縄」という言葉の使用頻度も全盛期に比べ著しく減った。
 さらに昨年の衆院選以来、れいわ新選組が「オール沖縄」の枠組みから外れるなど、辺野古移設に反対する勢力の内部にも不協和音がある。「オール沖縄」勢力は既に有名無実化していると言うほかない。

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