7、8の両日、石垣市の尖閣諸島海域で操業した湘南漁業協同組合(神奈川県横須賀市)所属の漁船「獅(しし)」に乗船したオーナー、羽柴宏昭さん(80)が9日、八重山日報の取材に応じた。領海侵入した中国海警局の艦船が漁船に接近しようとしたが、海上保安庁の巡視船が固いガードで寄せつけなかった。羽柴さんは「海保が弱体だったら、尖閣は全部、中国に取られている。『日本人が日本の領土を守っている』と感じた」と海保に感謝した。
羽柴さんは湘南漁協の運営副委員長を務め、複数の会社を経営している。昨年、尖閣周辺海域への出漁を続けている石垣市議の仲間均さんと知り合った縁で「尖閣諸島をこの目で見たい」と、自らも出漁を決意した。
4月下旬に「獅」を母港の佐島漁港(横須賀市)から石垣市の登野城漁港に回航。今月7日午前8時ごろ、案内の仲間さん、会社従業員らと共に総勢5人で尖閣海域に向け出港した。直後に海保から、中国海警局の艦船が待ち構えているという連絡があった。
「獅」は正午ごろ魚釣島周辺に到着し、漁を始めた。海保によると、機関砲を搭載した中国艦船「海警2303」「海警2301」が0時半ごろ領海侵入した。
羽柴さんによると、中国艦船は「獅」に接近しようとする動きを見せたが、巡視船は5隻体制で「獅」をガード。別の巡視船2隻が中国艦船と「獅」の間に割って入り、中国艦船の動きを阻止した。
羽柴さんは「巡視船は操船が巧みで、中国船とは差があった。おかげで恐怖は感じなかった。夜、海上で一晩過ごすためにアンカーを打つと、海保から衛星電話で『何かあったら助けに来るので、安心して休んでください』と連絡があり、感激した」と話した。
約50㌔のイソマグロをはじめ、アカジンミーバイ、スマガツオなど、約200㌔の水揚げがあったという。乗船した福原唯之さん(45)は「いくらでも釣れる漁場だった」と喜んだ。
「獅」は当初、5日間滞在する予定だったが、天候が荒れたため8日、石垣島に引き返した。中国海警局は同日、「中国領海に入った日本漁船を追い払った」と発表。羽柴さんは「『何を言っているんだ』という感じ」と一笑に付した。