【視点】農相発言 庶民感覚との乖離に驚く

 江藤拓農相が「米は買ったことがない。支援者がたくさん下さるので、家の食品庫に売るほどある」と発言し、石破茂首相に更迭された。国民が米価の高騰に苦しむ中、政治があまりに庶民感覚と乖離していることに驚く。農相は本当に米を買ったことがない恵まれた環境の人なのかも知れないが、それを人前で平然と口にするところが、現場を知らない政治家の恐ろしさである。
 後任には小泉進次郎自民党前選対委員長が任命された。総裁選にも立候補した若手のホープで国民的人気もあるが、この難局に、重過ぎる期待を背負っての船出になりそうだ。
 現在、米価にとどまらず、食料品や石油製品など必需品の物価高騰が庶民の暮らしを直撃している。物価上昇そのものは経済成長に伴って起こる現象で必ずしも悪いことではないが、現状では経済が低迷しているのに物価だけが上がり、国民所得の伸びが物価上昇に追い付いていない。これでは、単純に国民の窮乏化だけが進む。これを放置すれば、不況と物価高騰が同時に進むスタグフレーションの懸念すらある。
 少子高齢化による日本企業の長期的な競争力低下、人材不足、円安を受けた輸入品の値上がりなど、要因はさまざまだ。さらにトランプ関税による輸出入の停滞、アベノミクスの終焉による日銀の利上げと住宅ローンの上昇なども重なる。暮らしの先行きに明るい未来が見えてこない。
 国民に希望を抱かせるのが政治の役割でもあるが、現在のところ石破政権からは「楽しい日本」の掛け声以上のものが見当たらない。それだけに江藤氏の発言は、政権には大きな打撃になる。
 世論調査では消費税の廃止や減税を求める声が多数だが、石破政権は社会保障の財源を重視して慎重姿勢を崩さない。代わりに、自民党内では現金給付などを求める声がある。
 野党第一党の立憲民主党は食料品の消費税率ゼロを打ち出したが、一年限りの措置としている。7月の参院選では各党が消費税の扱いをはじめ、国民の所得を上げる政策を競い合うことになりそうで、経済問題が最大の争点になりそうだ。
 沖縄は全都道府県の中でもとりわけ所得水準が低く、県民が受ける物価高の影響はより深刻だ。しかも多くの離島を抱え、輸送や移動のコストは本土以上に生活を圧迫している。参院選に向け、文字通り離島の隅々まで行き届く生活支援策を、沖縄から訴える必要がある。

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