【視点】変わる県知事選の構図

 11月18日投開票の県知事選は、自民党の選考委員会が宜野湾市長の佐喜真淳氏を軸に選考作業を進める一方、沖縄観光コンベンションビューロー元会長の安里繁信氏も出馬の意向を示し、候補者擁立に向けた動きが慌ただしくなってきた。
 「オール沖縄」を名乗る県政与党は現職、翁長雄志氏の再選出馬を前提に知事選への準備を進めている。ただ、翁長氏は膵臓がんと闘病中であり、再選出馬が可能な健康状態なのか不安視する声も多い。「慰霊の日」の23日、全戦没者追悼式に出席。県議会では一般質問や代表質問で答弁に立ち、職責を全うする意欲をアピールした。ただ、抗がん治療の影響で痩せ細った姿に、野党・自民党の追及も及び腰になるほどだった。翁長氏自身は現時点で、出馬の有無を明らかにしていない。
 翁長氏の出馬が可能かどうかで、知事選の構図は大きく変わる。「オール沖縄」は保革共同体を建前とするが、保守系政治家として長いキャリアを持ち、人気の高い翁長氏を擁立できなければ、必然的に革新・リベラル色が強まる。一方、自民党は公明党、維新の会との共闘体制を各地の首長選で成功させ、着々と「保守・中道」勢力の結集を進めている。
 前回2014年知事選の「オール沖縄対保守」から、今回は「革新・リベラル対保守・中道」の構図に一変する可能性が強まっており、翁長氏が不出馬なら、この傾向はいっそう強まることになる。
 仲井真弘多前知事の時代まで、知事選では保守系候補が連勝してきたことを考えると、この構図になった場合、保守・中道勢力の勝機が広がる可能性がある。県政与党側もこうした事情を熟知しているため、翁長氏の再選出馬を最優先に考えざるを得ない。
 米軍普天間飛行場の辺野古移設の是非は今回も大きな争点になりそうだが、政府に有利な司法判断が続いていることや、工事が着々と進んでいる状況を考えると「辺野古だけが争点」という雰囲気にはなりにくそうだ。いずれにせよ辺野古だけにこだわらず、今後10年、20年という広い視野で沖縄の将来を考える候補者が求められる。
 米軍基地の負担軽減は沖縄が抱える最大の課題だ。辺野古移設問題は、県政の主張に沖縄のみならず全国的な共感を獲得した上で、政府と連携しながら解決策を探る必要があった。しかし、翁長県政が掲げる「辺野古に新基地を造らせない」という主張は、いずれの条件も満たせなかったと総括するほかない。

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