【視点】「沖縄本島版」2年目に突入

 八重山日報社が昨年4月、「沖縄本島版」の発刊に踏み切ってからきょう1日で1年を迎える。沖縄の言論に新たな風を吹き込みたいと意気込み、社員一同が無我夢中で努力するうち、あっという間に時間が過ぎたという感覚である。ただ今後の道のりは極めて厳しい。

 「沖縄本島版」は、県紙2紙を中心とした既存のメディアに加え、より多様な言論を発信する媒体が必要だとする読者の熱い「ラブコール」に応じて登場した。

 インターネットが発達した現在、新聞は斜陽産業とも呼ばれ、現状維持さえ危ぶまれている業種だ。沖縄本島で新規に新聞社を立ち上げようとすると膨大な投資が必要だが、見返りがほとんど望めない現状を考えると、現実的にそれは不可能と言っていい。そのため、八重山を中心に40年の歴史を持つ本紙に「沖縄本島進出」の白羽の矢が立った。

 沖縄最大の課題は言うまでもなく米軍基地負担の軽減だ。しかし、これまで沖縄本島を中心に発信されてきた言論は、基地負担の大きさを強調するあまり、日本の平和や安全を守るため、米軍や自衛隊が果たしてきた役割を必ずしも重視してこなかったという指摘があった。

 基地負担軽減を強力に進めるべきとの主張に異論はない。だが一方で、沖縄に迫る中国の軍事的脅威も直視すべきだと求める意見も、いわゆる保守派の人たちを中心に強かった。尖閣諸島を抱える八重山の地元紙として本紙に求められたのは、これまで無視または軽視されてきた県民の声をすくい上げる役割である。本紙はこの1年、県民がこれまでほとんど接する機会を持てなかったニュースや言論を、積極的に紹介しようと努めてきた。

 沖縄には沖縄本島、宮古、八重山をそれぞれ拠点とする6紙の日刊紙があるが、本紙はその中でも最も脆弱な組織であり、沖縄本島進出には多大な困難が伴った。しかし全国紙である産経新聞との記事交換や、進んで執筆を申し出てくれた多彩なコラムニストなど、内外からの言葉に尽くせぬ貴重なご協力を頂いた。

 この1年間で気づいたことがある。「沖縄に新たな新聞が必要だ」という声は、むしろ本土の人たちのほうが強いということだ。県民の多くは沖縄メディアの現状を肯定し、特に変革の必要性を感じていないようでもある。沖縄メディアでは、日ごろ「本土は沖縄の問題に無関心」という主張が一般的だが、本土の人たちはむしろ県民以上に冷静に、沖縄の置かれた状況を注視している。沖縄と本土は言うまでもなく運命共同体であり、沖縄の問題は本土にとって、決して他人事ではないからだ。

 自分の姿というものは、鏡の前で一歩引かないと案外見えない。私たちこそ本土の思いを理解する努力を深めるべきかも知れない。

 2年目に突入する本紙だが、営業体制の不備、取材記者の資質など、乗り越えるべき課題は山積しており、いまだに理想とする報道体制を実現できていないのも事実である。県民から強い支持を受けるようになり、私たち自身も死に物狂いにならなければ、沖縄本島版は存続できない。

 今年を抜本的な改革の1年と位置づけ、期待に応えられる紙面づくりへ、一丸となって邁進(まいしん)したい。

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