旧盆入りした13日、八重山各地では、あの世からやってきた祖先とされるウシュマイ(爺)とンミー(婆)がファーマー(子や孫)を引き連れて家々を回る伝統行事「アンガマ」が始まった。巡回先では親族や地域住民、観光客らが集まり、ファーマーたちの踊りに手拍子を送り、ウシュマイ、ンミーのとんちを効かせた珍問答に笑いを誘われた。
このうち石垣の識名安男さん(67)=㈱信用組会長=宅では午後6時から、いしゃなぎら青年会(西表孫孝会長)のアンガマ一行23人が訪れた。
ウシュマイとンミーが仏壇に手を合わせ、新盆を迎えた父・信用さんをしのび、信用さんが創業した今年50周年の建築会社、㈱信用組の商売繁盛などを願った。
ファーマーが三線の演奏と踊りを披露する幕間に、ウシュマイとンミーが集まった観衆と機知に富んだ問答を裏声で交わし合った。
子どもから「どうして歯が1本だけなのか」との問いに、「お菓子ばっかり食べないで、寝る時と起きた時にちゃんと歯磨きしないと1本になるんだよ」と諭した。
また大工道具の「番匠矩(ばんじょうがね)」について問われ、「石垣には万能な人が多かったため、『いしゃなぎらは、ばんのう(ばんじょう)な人が多い』と言われた。信用さんもその1人」と答えた。
安男さんは「生前は親孝行できなかったから、これで少しは返せたかな」、弟の安信さん(64)は「あの世と現世が一緒になったと感じた。伝統文化をつないだ先輩、受け継いだ青年会に感謝したい」と感慨深げに話した。
アンガマは15日まで郡内各地で行われる。