米国には、まだ米中の国力が開いている今のうちに「中国を止めなくては」という焦りもあると見られる。仮にトランプ大統領の登場がなくても、対中姿勢が厳しさを増すのは時間の問題だったと見るべきだ。
米国の焦りは安全保障分野でも顕著だ。22日の国連安全保障理事会で米国は、2日に失効した中距離核戦力(INF)廃棄条約に代わり、米国とロシア、中国の3カ国による軍縮の枠組み創設を訴えた。米国のコーエン国連代理大使は「(ロシアだけでなく)中国も、米国や同盟国を危険にさらす目的で数千発の中距離ミサイルを配備済みだ」と指摘した。
米国がINF廃棄条約を失効させた背景には、米ロが核戦力を制限している間に、中国が「漁夫の利」を得ることを懸念した事情があったようだ。
しかし中国の張軍(ちょう・ぐん)国連大使は「中国はいわゆる『3カ国軍備管理交渉』には参加しない」と述べ、国際的な軍縮協議への参加を拒否した。
米中の貿易戦争は、その根底に安全保障問題も含み、将来の「超大国」の座を懸けた暗闘という一面もある。そこで日本の立ち位置だが、独裁国家の中国に対し、米国を中心とする自由主義陣営にくみしていることは明らかだ。米国とともに中国の独走を止めるのも、国際社会で日本が担うべき大きな役割である。
米国の圧力に押された中国が対日関係の改善に傾くという思わぬ副産物もあった。軸足を明確にした上で、したたかに中国と渡り合う交渉術が必要だ。