【視点】新型コロナとの戦い長期戦に

 新型コロナウイルスの感染拡大がなお続いている。石垣市では、かりゆし病院でクラスター(感染者集団)が発生し、同病院関係者の感染者数は20日時点で33人に達した。
 県全体の感染者数も人口比で全国1位が続いており、県は全県に注意報を出した。依然、警戒を緩めることができない状況だ。
 沖縄は4月ごろから「第1波」、7月ごろからは、いわゆる「第2波」に襲われた。これから冬に向けて「第3波」の可能性にも備えなくてはならない。
 有効なワクチンもまだ開発されない中で、多くの専門家が「新型コロナとの戦いは長期戦になる」と予測している。県民にとってうんざりするような話ではあるが、覚悟を決めてウイルスに立ち向かわなくてはならない。
 4月や7月に比べれば、だいぶこの疫病への対処法も判明してきた。当初は驚異的な感染力があるとされてきたが「3密(密接、密閉、密着)」を避け、他人と会う際はソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を取り、マスク着用を徹底すれば、かなりの程度感染を防げるという共通認識が形成されつつある。
 特にマスクは、自分の感染防止ではなく、自分が他人に感染させないために必要なものだ。口から出る飛沫(ひまつ)を拡散させない効果がある。マスク着用は、外出する際の最低限のマナーとして今後とも定着させなくてはならない。
 「ウィズコロナ」という言われ方もされているように、季節性インフルエンザと同様、新型コロナの感染自体は不可避的に起こる。そこで最低限、重症化のリスクが高い高齢者や、基礎疾患がある人に感染させない意識を持つことの重要性も再認識されている。
 当初は観光客などが県外から沖縄、八重山にウイルスを持ち込む「移入例」が最大の脅威とされたが、現在では観光客数が急減したこともあって、むしろ県民同士の二次感染、三次感染が大きな課題に浮上した。
 観光客受け入れを拡大しながら、県民自身の感染防止意識を高めていく必要がある。新規感染者数が全国比で全国最悪の状況のままでは、観光客がウイルスを沖縄に持ち込むより、観光客が沖縄で罹患(りかん)するリスクのほうが高いとみなされかねない。
 八重山はかねてから離島ゆえの医療体制の脆弱さが不安視されてきた。だが新型コロナウイルスの初確認以来、離島のさらにまた離島である西表島での感染拡大、石垣市でのクラスター発生など、恐れていた事態が立て続けに現実化してしまった。幸い死亡者は出ていないが、感染症対応の病床数が逼迫(ひっぱく)しつつあることもあり、予断を許さない状況だ。お隣の宮古島市でも感染拡大の兆しがあり、気がかりだ。
 石垣市で現在、問題になっている院内感染関係者の検査は100人規模で進められている。
 市中感染が発生する前に、早期の検査で感染者を徹底的に洗い出せば、感染拡大は阻止できる。濃厚接触者の迅速な把握など、小さな島だからこそ可能な取り組みもあるだろう。石垣市は国や県と連携しながら、効果的なウイルスの抑え込みに努めてほしい。

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