八重山では、キャッシュレス決済は台湾をはじめとする外国人観光客の増加に対応するためにも必要な仕組みだ。3市町はキャッシュレス化推進に向けた連携協定を琉球銀行と結び、商工会が中心になって普及啓発に乗り出した。政府の支援により、期間中、対象店舗に実質無償で提供される決済用の端末は、主要ブランドのほか、中国の3大決済サービスにも対応する。キャッシュレス導入店舗が増えれば、観光客も旅行先に多額の現金を持ち歩く必要がなくなり、需要誘発の効果が期待できそうだ。
一方で課題もある。決済事業者に支払う手数料のコストを小売事業者がどう判断するか。観光客以外の一般住民の間では、キャッシュレス決済への意識が高いとは必ずしも言えない。現金決済が圧倒的に多いままなら端末設置のメリットは少ない。住民の啓発がどこまで奏功するかがカギだ。
3市町と連携協定を結んだ琉球銀行は手数料の一部を代理店に還元する意向を示しており、注目されるところだ。
ポイント還元制度は10月から来年6月までの9カ月間の期間限定となるため、その後の需要がどこまで持続するか未知数の部分もある。キャッシュレスが店舗側と消費者側の双方にとって有益であることをアピールするため、新たな制度の検討も必要になるのではないか。
ただ、時代の趨勢(すうせい)がキャッシュレスの方向へと進んでいるのは間違いない。
将来的にはカードすら不要になり、店舗に入った買い物客は商品を持ってレジを素通りすればよく、支払いはカメラを使って個人を識別する顔認証システムで済ませる、という時代がいずれ来そうだ。現金決済はむしろ不便という状況になりつつあるわけで、消費者側にも店舗側にも、未来を先取りする意識が求められる。