【視点】負担増求める米国に日本は

 在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)を巡り、トランプ米政権が日本政府に対し、現行から5倍の増額を求めていたと報道された。駐留経費負担は2019年度予算で約1974億円を計上しており、単純計算すれば9800億円以上の巨額要求となる。
 一方、菅義偉官房長官は18日の記者会見で「そのような事実はない」と否定。現行の在日米軍駐留経費負担特別協定は21年3月まで有効だと指摘した上で「現時点で新たな協定に関する交渉は行われていない。在日米軍駐留経費は日米両政府間の合意に基づいて適切に分担されている」と述べた。
 情報が錯綜しているが、トランプ大統領が2016年大統領選で在日、在韓米軍の駐留経費について日本や韓国の負担増を求めていたのは事実だ。日本が米軍の庇護で平和を享受するような状況が、この先も続く保証はないことが改めて浮き彫りになった。
 何より感じるのは、世界一の超大国である米国が「世界の警察官」としてのプライドと、「アメリカファースト」の打算との間で引き裂かれている現状だ。
 ペンス副大統領は10月の演説で、中国の香港政策や、中国公船による尖閣諸島への領海侵入を批判した。自由と民主主義の騎手として、全体主義の中国と対峙する米国の、冷戦以降の伝統的な顔がそこにある。もう片方の、思いやり予算の増額を主張するビジネスマンのような顔とのギャップが著しい。
 「米国は世界の警察官ではない」と言明したのは民主党のオバマ前大統領だが、民主党対共和党などという党派的対立を超えて、米国そのものが大きく揺れ動いている。
 もっとも、中国が巨大な経済力にものを言わせて大軍拡を続けている現状では、米国の経済的負担が続かないというのも一理ある。日本も相応の防衛費アップを求められるのは当然だが、それが「思いやり予算」の現実離れした増額要求まで波及していいかは別の問題だろう。

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