石垣市議会で自治基本条例を議論していた調査特別委員会が「廃止すべき」と結論を出した。野党は猛反発しているが、今ごろ何を言っているのか。野党は特別委に入ることを拒否していたのに◆入ってしまうと、与党主導の条例廃止論にお墨付きを与えかねない。そう懸念したことは分かる。しかし言論の府では言論で勝負すべきであり、発言権を放棄した以上は不戦敗だ◆条例廃止に反対する市民グループもチラシ配布などを始めているが、こちらも「今ごろ感」が強い。特別委が設置された時点で、廃止の動きは容易に予想できた。条例存続を求めるなら、もっと早く本腰を入れるべきだった◆中山義隆市長がこの条例の運用に消極的だったのは事実だ。だが同様に野党も一般市民も、条例に魂を入れる作業を長く怠ってきた。制定以来の10年、この条例を実際に活用したのは、住民投票の実施を求めた自衛隊配備反対派だけではないか。だから与党議員から「市民には、あってもなくてもいい条例」と揶揄(やゆ)される始末になったのだ◆条例がもともと石垣市の民情に合わなかったのか、条例の高尚な理念に市民の意識が追い付かなかったのか。「これから活用しよう」と将来の話をするにしても、この段階になってからでは遅過ぎる。