海上自衛隊のP3C哨戒機2機は11日、中東海域での情報収集活動に当たるため、那覇航空基地(那覇市)を出発した。河野太郎防衛相による派遣命令を受けた第1陣で、20日から現地で活動を始める。防衛省設置法の「調査・研究」に基づく初の海外への長期派遣。期間は約1年とし、延長も可能だ。河野氏は訓示で「大きな意義がある」と強調したが、米国とイランの対立で緊迫した情勢が続く中、偶発的衝突に巻き込まれるリスクをはらんでいる。
安倍晋三首相は中東訪問の出発前に「日本関係船舶の安全確保は極めて重要だ。関係国の理解を得て、万全の準備を進めたい」と羽田空港で記者団に述べた。政府は横須賀基地(神奈川県)からとみられる護衛艦「たかなみ」の2月2日の出航に向けて準備を急ぐ。下旬に現地での活動を開始。派遣規模は哨戒機と護衛艦を合わせて260人程度となる。
哨戒機はアフリカ東部ジブチに拠点を置く。ソマリア沖アデン湾での海賊対処活動も実施し、情報収集と同時に二つの任務を担う。上空からの目視やレーダーで、不審船の有無を確認。危険情報は国土交通省を通じて日本の海運会社に通報する。ホルムズ海峡の安全確保を目的とする米国主導の有志連合には参加しない。得た情報は米軍などと共有する。
哨戒機と護衛艦の活動海域は、オマーン湾、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側の公海に限る。自衛隊関係者は「今の中東は何が起きるか予測できない。危険と思われる海域に近づくのはなるべく避ける」と明かす。河野氏自身も10日の記者会見で、中東情勢について「緊張が高まっている状況にはあると思う」と認めている。
緊急事態が起きた場合、自衛隊法に基づく海上警備行動を発令する。ただ武器を使用しての防護は日本籍船に限定。日本人が乗った外国籍船には、警告音を出すなどの限定的手段しか取れない。
今回派遣される部隊名は第38次派遣海賊対処行動航空隊で司令は稲生修一2佐。隊員の最年少は21歳、最年長は52歳。女性隊員も1人おり、今回で3回目の派遣となる隊員もいる。沖縄県出身者は6人。