【視点】蔡氏再選 交流強化の機会に

 台湾総統選が11日投開票され、中国共産党に批判的な民進党の蔡英文総統が史上最多得票で再選された。
 台湾は八重山諸島に隣接し、沖縄にとって一衣帯水の間柄だ。「民主主義の砦」が守られ、中国の影響力拡大が阻止されたことになり、沖縄にとっても安堵すべき結果と言える。
 蔡氏はツイッターに日本語で「国民の声に謙虚に向き合い、不動の心で困難を乗り越え、そして、同様に台日の絆を深めていきたいです!」と書き込んだ。
 中国に対抗する必要上という政治的理由もあるとはいえ、蔡氏は日本に対し極めて友好的なリーダーであり、貴重な存在だ。

 中国、韓国、北朝鮮、ロシアといった日本の近隣国は、基本的に日本とは国益が矛盾する関係であり、日本は真の意味での友好国を周辺に持たない。そうした中で親中路線の最大野党、国民党の韓国瑜(かん・こくゆ)高雄市長が当選した場合は、日本は文字通り四面楚歌に陥る可能性もあった。
 台湾は国民党の馬英九政権時代、露骨に対中融和姿勢を取り、尖閣諸島問題で日本との対決姿勢さえ示したことがある。政権が交代し、台湾が中国寄りに変化すれば、八重山へのマイナスの影響も予想された。
 今回の総統選を前に、中国は韓氏のトップセールスを受け入れ、高雄市の農産物を大量に購入するなど、露骨に韓氏に肩入れした。一方で蔡政権に対しては、台湾への個人旅行を一時停止させたり、台湾と外交関係を結ぶ国に断交を迫るなどの圧力も加えた。
 蔡政権は2018年の統一地方選で大敗するなど支持率低下に苦しみ、当初、再選は困難視されていた。情勢が急変したのは、中国が香港の民主化デモを弾圧する姿勢を示したため、台湾の対中世論が硬化したからだ。台湾に対し「一国二制度」での統一を迫り、武力行使を放棄しない考えを示したことも台湾人の感情を逆なでした。

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