【視点】安保60年 意義大きいが課題も

 日米安保を巡って沖縄が抱える最大の政治的問題は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設だ。政府は「抑止力維持と基地負担軽減を両立させる政策」として移設を推進している。
 これに対し、県は過重な基地負担に反発し、辺野古移設には「負担の格差を固定化するもので、容認できない」と抵抗する。政府との認識の隔たりは大きいが、宜野湾市民の危険を除去するという観点からは、今できることを着実に進める意義は大きい。政府に理があると指摘せざるを得ない。
 玉城デニー知事は定例記者会見で、米軍基地が集中する現状を「異常」と批判。「安全保障は国民全体で考え、負担も全国で担うべきだ」と負担軽減を訴えた。日米安保そのものについては、日本や東アジアの平和と安定の維持に寄与してきたと評価した。
 太平洋戦争末期の沖縄戦では、県民の4人に1人が犠牲になったとされる。戦後、米国が施政権を持つと米軍側は土地を強制収用し、基地を建設した。1972年の本土復帰後は、日米安保条約に基づき提供施設・区域として引き継がれた。
 米軍基地が沖縄に集中している現状を「本土による差別」と批判する声もあるが、占領下にあったという歴史的経緯や、沖縄が東アジアで戦略的な要衝にあるという地理的条件も考慮に入れれば、一概に「差別」という言葉を使うことは適切でない。
 県民が憤っているのは米軍関係の事件・事故が後を絶たない現状だ。米兵の法的地位や基地の運用を定めた日米地位協定の抜本的な見直しは実現していない。
 玉城知事は「米側に裁量をゆだねる運用の改善では抜本的な改善にならない」と批判する。日本国民全体が、独立国としての矜持(きょうじ)に関わる問題として受け止める必要がある。

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