八重山家畜保健衛生所は、沖縄本島で発生した豚熱(CSF)の予防ワクチンを八重山の豚にも接種する是非を検討している。玉城デニー知事は沖縄本島の豚に接種することを決めているが、離島に関しては現時点で方針を明示していない。
ワクチンを接種した場合、全ての養豚農家がワクチンを接種した地域にウイルスがいないことを証明するには時間がかかるため、長期間ワクチンを接種し続ける必要がある。その費用は養豚農家が負担する。
また、接種しても全ての豚が十分な抗体を持つとは限らないというリスクもある。ワクチン接種後、抗体を持たなかった豚が感染した場合、予防接種で抗体を持った豚と感染した豚の違いが検査で判別できなくなり、感染の発見が遅れる可能性がある。
一方で、八重山でワクチン接種を実施しなかった場合のデメリットも指摘される。最も大きな問題は、ワクチン接種した本島の豚には非接種地域への移動制限がかかり、八重山などへの輸送できなくなるため、本島から種豚を仕入れている業者に影響が出ることだ。
良質なブランド豚を提供するため証明書付きの豚にこだわる農業生産法人㈲やえやまファームは母豚を本島から仕入れている。
同社の島田洋平畜産部部長は「ワクチン接種をしない判断になれば、本島から仕入れていた母豚を本土から仕入れなければならず、輸送費が高くなるだろう」と懸念した。
八重山家畜保健衛生所は豚熱問題を契機として、ワクチン接種の補助を実施する場合の受け皿となる養豚農家の組合設立を提案。各農家の意見を集約し県に届け、農家への情報共有をスムーズにするなどの狙いもある。
沖縄本島の豚に対しては、県がワクチン接種プログラムをもとに、豚と野生イノシシのワクチン接種を実施する。