首里城(那覇市)の火災直後の立体画像を、復元や観光に役立てて―。航空測量の専門企業が、正殿などが焼失した首里城の空撮写真を使い、3D画像や仮想現実(VR)映像を制作した。昨年10月31日の火災から4カ月。最先端の技術を駆使した専門家は「風化を防ぎ、後世に語り継いでほしい」と願う。
手掛けたのは、東日本大震災や熊本地震で被災地の空撮写真や3Dデータを自治体に提供した「パスコ」(東京)。復元計画や観光、教育に生かすため、首里城公園内への設置を提案している。
工学博士の榊原庸貴主任技師(46)が火災翌日の昨年11月1日、自身が開発した特殊カメラで、ヘリコプターから現場を撮影。約500枚もの写真を専用のソフトで合成して仕上げた。
3D眼鏡で画像を見ると、焼けた屋根瓦などをさまざまな角度から確認できる。画像と建物名が記された地図を同時に表示し、画面に触れて拡大や方向転換をしながら立体的に見ることも可能。VR映像はゴーグルで360度の風景を確認でき、火災後の現場にいるような感覚が味わえる。
復元に向けた技術検討委員会のメンバーらに紹介すると、じっくり見入っていたという。一般公開は未定だが、復元に携わる関係者は「首里城の移り変わりを見たい人は多い。これを生かさない手はない」と前向きな姿勢を示す。
榊原さんは「まだ直視できない沖縄県民の感情にも配慮しないといけない」と、シンボルを失った無念さをおもんぱかる。その上で「歴史的価値を持ったデータになるのは間違いない」と、今後の活用に期待している。