竹富町の西表島に生息する国の特別天然記念物イリオモテヤマネコを守る活動に充てる町の保護基金が基金設立以来、10年間で2度しか支出されていないことが分かった。基金の残高は企業や個人から寄付を受けて積み上がる一方、支出が低調で基金が生かされずに保護活動が不活発になり、「宝の持ち腐れ」の状態になっている。
町によると、基金の残高は2019年度末時点で859万円。10年度の基金設立以降、収入は企業や毎年実施の「やまねこマラソン」の参加者からの寄付、ふるさと納税などで積み増しされている。
一方の支出は14年度にヤマネコが車にひかれる事故防止で道路沿いにフェンスを設ける工事で200万円、19年度に道の視界を遮る草の除去作業で70万円を使った2度にとどまっている。
基金は保護活動の財源で、町民の1人は「支出が低調ということはそれだけ保護活動が不十分なこと。せっかくの基金がもったいない」と指摘する。
環境省西表自然保護官事務所の話では、イリオモテヤマネコの島内生息数は100~150匹。土地開発の進行、交通事故の増加などで減る傾向になっている。ヤマネコの巻き込まれた交通事故は18年度に9件、19年度に4件起き、対策が急務になっている。
基金はヤマネコを守る目的で条例化され、寄付を中心に財源化して保護活動費に充当している。
町は支出低調の反省に立ち、島内移住者の務める地域おこし協力隊のメンバーの協力を得てヤマネコの保護につながる支出の在り方の検討を始めた。
町世界遺産推進室は「基金の目的に合う支出の活性化に努めたい」と話している。