大都市圏を中心に新型コロナウイルスの感染が拡大する中、石垣市の中山義隆市長が感染の可能性がある観光客に対する来島の自粛を呼び掛けた。観光を基幹産業とする石垣市にとって、来島自粛の呼び掛けは観光業の首を絞めることになりかねないが、市民の命を守るための苦渋の選択。感染防止と経済振興が二者択一の関係になっている厳しい現状を改めて浮き彫りにした。
「金儲けを取るか、命を取るかだ」。3月31日、一日あたりの観光客の入域制限を要請した市議会「未来」会派の後上里厚司市議は、中山市長にこう迫った。市長は「命を取りますよ」と即答した。
3月に入り、観光地や歓楽街は「コロナ疎開」の観光客で再びにぎわい始めたが、多くが大都市圏からの来島者と見られるだけに、市民から不安の声が上がり始めている。
「未来」会派が要請した感染防止策は20項目と多岐に渡るが、とりわけ入域制限は思い切った措置。箕底用一氏は「個人の観光客が増えている。無症状者にも保菌者がおり、入域制限も必要ではないか」と指摘した。
同日、市長と面会した市議会「自由民主石垣」会派の砥板芳行市議らも、市長が石垣島への旅行や出張に関する注意喚起を行うべきだと要請した。
現時点での入域制限には応じなかった中山市長だが、与党2会派の要請を受けた形で、この日の夕方には市役所で記者会見。観光客の増加について「平時であれば大変ありがたいことであり歓迎するが、今は国難」とジレンマに苦しむ心境を吐露した。