【視点】日中友好、八重山の不安除去が先

 「世界の覇権国」である米国の感染者数は8日現在で約40万人、死者数は約1万3000人に達し、中国の感染者数約8万人、死者数約3300人を大きく上回る深刻な事態に陥った。先進国であるイタリアでは医療が崩壊し、火葬を待つ棺(ひつぎ)の安置場所も足りないという悲惨な光景が現実化している。高い社会水準を誇っていたはずの西欧諸国の脆弱(ぜいじゃく)さが明るみに出たのだ。
 世界的な疫病の蔓延(まんえん)に乗じ、ウイルスを「抑え込んだ」と称する中国の強権的な手法が、かえって世界から評価されるような状況にならないか心配だ。中国が「勝ち逃げ」し、世界の覇権国に上り詰めることを許すべきではない。
 日本も今後、さらに感染が拡大する重大な局面を迎える。ここで医療や社会秩序の崩壊が起き、国民から「政府が強権を振るうしかない」という声が続出する事態になれば、民主主義の根幹が揺らぎかねない。その意味では、新型コロナウイルス騒動を通じ、西欧的な民主主義、自由主義の価値観も挑戦を受けていると言っていいだろう。
 習近平主席の国賓訪日は延期になったが、日本政府は時期を見て確実に実現させる意向だ。そうであるなら、真の日中友好を実現する絶好のチャンスと捉え、国民の多くが習氏を温かくお迎えする雰囲気をつくりたい。
 しかし日本国内で緊急事態が宣言されている最中も、石垣市の行政区域である尖閣諸島周辺海域では、中国公船が領海侵入を続けている。
 中国政府は国家意思として侵入をやめないのだろうし、こと尖閣に関しては、中国のメンツにかかわる問題として、絶対に譲歩できないのだろうと想像できる。
 だが中国政府の覇権主義的な思考形態は、世界の恒久平和を希求する八重山住民の心情とは、全く相容れない。八重山住民に大きな疑念を残したままの日中友好とは、砂上の楼閣(ろうかく)ではないか。

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