【視点】離島の民意に向き合うべきだ

 台湾有事を念頭に、自衛隊、海上保安庁が円滑に利用できるよう政府主導で整備を進める「特定重要拠点空港・港湾」に、県内から新石垣空港、与那国空港、波照間空港を含む7空港が選ばれる見通しになった。石垣港、新たに整備される与那国の港湾など5港湾も指定候補となっている。
 だが、玉城デニー県政は指定に同意しない考えを政府に伝えた。地元の石垣市や与那国町から要望が出ている新石垣空港、与那国空港の滑走路延長事業に関しても、国に対する来年度予算要求に盛り込まなかった。
 玉城県政が特定重要拠点の指定に否定的なのは、県政与党から空港・港湾の軍事利用を懸念する声が上がっているためだ。
 だが地元が特定重要拠点の指定を「千載一遇のチャンス」(与那国町の糸数健一町長)と受け止めてインフラ整備を熱望しているのに、県が立ちはだかるという構図は、健全ではない。
 糸数町長、石垣市の中山義隆市長は、特定重要拠点の指定を受け入れる考えを明言している。加えて石垣市議会12月定例会では議員の緊急動議が提出され、新石垣空港の滑走路延長事業について「来年度の当初予算に間に合うよう、国に対して要請してほしい」と求める知事宛ての意見書を賛成多数で可決した。
 意見書はむろん、県の慎重姿勢を見越した上で出た。県に対し「尊重するのは地元の民意か、反基地イデオロギーか」と踏み絵を迫る意味合いもあった。結果的に県は、意見書に向き合う姿勢を見せなかった。残念というほかないし、地元の不信感は、さらに増幅されることになるだろう。
 石垣市や与那国町はもともと、観光振興の観点から空港の滑走路延長を要望していたが、台湾有事の懸念が表面化したあとは、空港の機能強化によって、住民の避難を円滑に進める観点も加わった。
 滑走路延長で大型機の就航が可能になれば、有事の際、一度に運べる住民や観光客の人数が増える。離島住民の命を守る上からも、空港や港湾の機能拡充は当然の要請である。「軍事拠点化に反対だから」という、およそ非現実的な理由で県が整備に反対するなら、到底、離島住民の理解を得られない。
 有事の懸念がある程度現実的になれば、自衛隊や米軍の民間空港・港湾使用が避けられないのは、子どもでも分かる理屈だ。また、そうした事態に備え、政府が空港や港湾の機能強化に取り組むのも、国民の生命財産に責任を持つ立場である以上、当然である。
 県は石垣、与那国空港の滑走路延長に消極的な理由について、民間の需要予測が不透明であることも挙げている。
 政府や地元は有事に対応できる空港・港湾整備の必要性を訴えているのに、県からビジネスライクな需要予測の話が出てくることに違和感を禁じ得ない。地元から見れば、滑走路延長を事業化したくない言い訳のようにも見える。
 いずれにせよ県の硬直化した対応には、多分に玉城知事の政治的姿勢が影響している。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設には「県民の民意を尊重せよ」と言って反対するのに、八重山住民の民意である空港・港湾の整備を政治的理由で阻止しようとするなら、ダブルスタンダードの批判は免れない。
 「オール沖縄」と呼ばれる県政になって10年近く、基地問題が最重要課題とされる一方で、基地のない離島の振興では、目立った成果が見られない。離島では玉城県政の支持者の間でさえ、県が離島振興にどこまで本腰を入れているのか疑う声が出ている。
 かつて「離島振興なくして沖縄の振興なし」は県政の合言葉だった。だが今はどうか。現在の状況が続けば、いずれ「オール沖縄県政の交代なくして離島振興なし」と言われるようになるだろう。県にはそれくらいの危機感を持って、インフラ整備を含めた離島振興に取り組んでもらう必要がある。

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