経済より命、苦渋の決断 沖縄や離島 医療崩壊に危機感

人通りが少ない国際通り=3月7日夕方、那覇市

 沖縄県や各地の離島が、全国的な新型コロナウイルスの感染拡大を受け、島外からの訪問や島民らの往来を自粛するよう相次いで要請している。大型連休や夏の観光シーズンを控え、経済や生活への打撃は計り知れないが、島々には医療崩壊への危機感があり、「命を守るため」(同県)に苦渋の決断をした。専門家は「国は離島の医療支援拡充を」と注文した。
 「4月に入り、日々の売り上げはこれまでより9割減った」。那覇市中心部の「国際通り」にある土産物店副店長の池原一紀さん(34)はため息を漏らし、続けた。「命を守るため休業も必要かも。でも国の支援策だけでは先行きが不安だ」。通りには「臨時休業」の張り紙が目立った。

 県では2月14日、タクシー運転手の感染を初めて確認。同下旬から約1カ月間、新たな感染確認はなかったが、県外から感染者が来る「移入例」が徐々に増えた。玉城デニー知事は自粛呼び掛けに慎重姿勢だったが、観光業者らが「健康を考えるとやむを得ない」との意見でまとまり、今月8日の記者会見で県として異例の要請をした。
 緊急事態宣言の対象である東京都の伊豆大島や八丈島、対象ではない新潟県の佐渡島、粟島の自治体なども同様に自粛を呼び掛けた。沖縄本島を含むこうした島々では、感染者向けの病床が少なかったり、医師が常駐していなかったりする上、重症者の迅速な島外搬送も難しい。
 長崎県の離島の壱岐市では3月14日に初めて感染を確認。県は感染者1人が重症化する恐れがあるとして、全国で初めて自衛隊のヘリコプターで島外に搬送した。県は今後も重症者らを島外の指定医療機関に移す方針で、今月10日には海上保安部や消防などと巡視船での搬送手順を確認した。
 一方、観光業への影響を懸念し自粛要請に反発の声が上がった例も。世界自然遺産に登録されている鹿児島県の屋久島では、荒木耕治屋久島町長に対し、ホテルや運輸業を展開する事業者が「営業権の侵害だ。死活問題になる」と要請撤回を求めた。町長は「命が最優先」と応じなかった。
 医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は訪問自粛の要請に関し「地域経済との兼ね合いから難しい問題だが理解できる。ただ、人の移動を完全に防ぐことは難しく、国は離島への医師派遣や検査体制の拡充を急ぐべきだ」と指摘している。

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