【視点】「コロナ後」の世界と沖縄

 中国は初期の被害こそ甚大だったが、その後はウイルスの「抑え込み」に成功したと宣伝した。世界から疑いの目を向けられていることは事実だが、都市封鎖や国民の徹底的な監視といった中国式の強権的な手法が、感染拡大防止に一定の効果を上げたという論調もある。非常事態にあって、中国式の強権が逆に評価を高めているのは皮肉な現象だ。
 コロナ禍の中、中国は今月、沖縄本島と宮古島間で空母を2度にわたり航行させ、南シナ海で新たな行政区の設置を発表するなど、対外的な勢力拡張の動きをさらに強めている。
 その思惑は何か。余裕と取るか、国内の不満を外にそらそうとする動きと取るかは、解釈が分かれる。いずれにせよ、中国の特異な行動から、米国と並ぶ「超大国」の座をつかみ取ろうとする強い意志を感じ取ることは可能だ。
 中国は今やアジアのスーパーパワーであり、GDP(国内総生産)は日本の約3倍、軍事費は約5倍の規模に達した。日本を含め、現在のアジアで、一国で中国に対抗できる国は存在しない。中国が「一帯一路」構想による経済支援を広げた結果、南シナ海を巡る紛争を抱えるベトナムやフィリピンを除き、目立った反中の国家も見当たらない。
 地理的に中国の軍事的脅威を感じない欧州諸国は、対中包囲網の構築には消極的だ。ロシアも中国と良好な関係を保つ。日本としては、中国と正面から対峙できる唯一の国である米国との同盟に、安全保障を託さざるを得ない。
 日本の国力は少子高齢化で衰退基調にあり、特に人口減少が危機的なレベルにある。中国との国力差は、将来的にも開がる一方になることが予想される。
 かつて冷戦期、東欧諸国は近隣の超大国ソ連の「衛星国」としての運命をたどった。日本も国力の衰退を早急に克服しない限り、超大国・米中の都合で変転を強いられる「自分で自分の運命を決められない国」になりかねない。
 それは日本の繁栄だけでなく、自由や民主主義体制の終焉(しゅうえん)を意味する可能性が高い。「コロナ後」の世界で、対中最前線である沖縄や八重山の運命は、とりわけ厳しいものになるはずだ。

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