30日投開票の知事選で、一括交付金の創設経緯をめぐり、候補者2人の陣営が応酬を繰り広げている。前衆議院議員の玉城デニー氏(58)は、国会議員時代の実績として、沖縄振興一括交付金の創設で「政府与党(当時民主党)に玉城が直談判して実現にこぎつけた」とアピール。これに対し、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)を支援する公明党衆院議員の遠山清彦沖縄方面本部長は「『直談判して実現にこぎつけた』という表現は誇大宣伝だ」と断じる。
問題となっている玉城氏の発言は、14日午前7時25分に同氏のフェイスブックに投稿されたもの。遠山氏はこれを受け、「玉城氏が一括交付金に反対したとか、応援しなかったとは言わない。会合に出たり、意見を言ったこともあるでしょう。しかしそれはみんなやっていること」と疑問視。
その上で「もし直談判してこぎつけられる実力者であれば、同制度について実質的に協議した与野党プロジェクトチーム(PT)の『沖縄与野党交渉人会』の9人のメンバーに選らばれるはず」と述べた。メンバーには、遠山氏や県選出の島尻安伊子参議院議員(当時)は含まれているが、玉城氏の名前はない。
当時の民主党はマニフェストに「国から地方への『ひもつき補助金』を廃止し、基本的に地方が自由に使える『一括交付金』として交付する」と掲げていた。民主党政権発足後の2011年12月、沖縄関係予算案で一括交付金の制度が設けられた。
遠山氏によると、11年度の一括交付金予算案は当初、2300億円で、民主党政権は東北大震災後であることなどを理由に、交付金の額を抑える方向だった。しかし野党だった自公が、沖縄の意向も聞いた上で3000億円以上必要だと指摘。与党民主党の意向だけで制度や予算枠が固まったのではなく、与野党PTの交渉人会で一括交付金の実質的内容が協議されていたという。
遠山氏は、当時の仲井真弘多知事が民主党のマニフェストをもとに、沖縄振興計画の中で沖縄だけの一括交付金制度を実現したとして「最大の功労者は仲井真氏」と強調した。
玉城デニー氏の事務所は、本紙の取材に対して「誇大宣伝ではない」と遠山氏に反論。玉城氏の具体的な関与は、当時の新聞報道をもとに「民主党の沖縄協議会として、当時の枝野官房長官に要請した。また菅内閣総辞職後、新しい政権下でも沖縄を重視してほしいと言った」などと説明した。
だが、この新聞報道について遠山氏は「玉城氏が何をしたかが分からない。会合に出たというだけでは弱い。反論になっていない」と主張する。